第六章
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船に戻って、乾いた洗濯物をしまいながら、さて夕食はどうしようか、と考えていると船の外が騒がしくなってきた。
偵察班が戻ってきたようだ。
甲板から顔を出す。
「おかえりなさい!」
「おうミドリ!」
「降りてこいよ!」
皆に呼ばれて船を降りる。
船番だった仲間たちも、すでに全員が砂浜に集まっていた。
見ると人の10倍くらいの大きさの獣が2頭
砂浜に横たわっている。
「わぁ!どうしたの?これ。」
私は初めて見るその生物に
思わずキラーの後ろに隠れる。
「大丈夫。もう死んでるよ。キッドが仕留めたんだ。」
「キッドが?すごい……」
「俺を食おうと襲ってきやがったから、逆に食ってやることにした。」
いつの間にかキッドが腕組みをして隣に立っていた。
「え…食べるの?これ…」
「当たり前だろ。さっさと支度しろ。」
「……何の?」
「何のって、バカかお前!バーベキューに決まってるだろ!?」
「バーベキュー!」
その言葉を聞いて胸が踊った。
皆が薪にする木の枝や、コンロを作るための石を集めてくれている間に、私は船から調理器具や食器類を持ち出した。
気持ちはワクワクしていた。
幼い頃、父と母と家の庭や海岸でよくやったバーベキュー。
まさかこんなところで、皆とやることになるとは。
きっと楽しいに違いない。
石を積み重ねてコンロを作り、火を焚いてくれているクルーの横で、キラーがさばいてくれた獣の肉を串に刺し、塩胡椒で味付けをしていく。
と、隣でキラーが話し始めた。
「この島だが、まだ全ては見きれていないが、今日のところは人に会うことはなかった。いたのはこういう獣たちだけだ。ログもどのくらいで貯まるのかわからない。」
甲板から降ろしたリクライニングチェアに寝そべっていたキッドも立ち上がる。
「まぁ食いモンに困ることはねェが、この島を出られるのはいつになるかわからねェってことだ。ログが貯まるのが明日かもしれねェし、一年後かもしれねェ。」
「一年後!?」
私は思わず声をあげた。
「ミドリの結婚式は2ヶ月後だったな?」
「うん、そうなんだけど…」
「間に合わねェなァ!」
キッドが嬉しそうにガハハと笑った。
人の不幸を楽しむところは相変わらずだ。
私たちの会話を聞いて、クルーの皆が目を丸くしてこちらを見た。
「結婚式ィ!?」
「ミドリ結婚すんのか!」
「オイ、聞いてねェぞ。この船を降りるのかよ!」
「俺が戦えもしねェこいつをずっと乗せておくわけねェだろ。島まで送ってやるだけだって言ってただろうが。」
それぞれ声をあげるクルーたちをキッドが静める。
キッドの言葉に、仲間たちではなく私の胸がズシンと痛んだ。
私は気にしないようにして、調理を続けた。
それでも、隣にいるキラーには私が落ち込んでいるのに気付いたようだ。
「いつになるかはわからないが、必ず島には送り届ける。これからのことはキッドと相談しておくから、心配するな。」
「うん、ありがとうキラー。」