第五章
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2人会話もなく、ただ降る雨を眺める。
先ほどより雨脚は弱まってきた。
沈黙を破ったのは私だった。
気になっていたことを聞いてみようと思った。
「……なんで急に優しくなったの?」
「あ?なんだよ急にって。まるで俺が元々優しさのカケラもねェような言い方だな。」
「だって…そうじゃん。」
「てめェなぁ——」
「横暴だし、意地悪ばかりだし、口は悪いし、ちっとも優しくしてくれたことなんてなかったのに。」
なぜか止まらなくなってしまって
勢いのまま話し続ける私。
キッドは黙って聞いていた。
「昨日は髪を撫でてくれたり、今日はご飯連れてってくれて、買い物にも付き合ってくれたり……今だって。こんな雨、いつものせっかちなキッドだったらびしょ濡れになっても船まで一気に走るでしょ?なのにこうやって休憩してるのは、私が一緒だからでしょ?」
「………。」
「昨日私が拐われたこと、もし責任を感じてるなら…それは全然気にしてほしくない。むしろ私は助けてくれて感謝してるんだから。なんか、あんたが気遣ってくれたりすると、こっちは調子狂っちゃって——」
「うるせェ口だな。」
急にキッドに顎を掴まれ、上を向かされて
そのまま唇を塞がれた。
柔らかいキッドの唇の感触。
1秒もしないうちに、すぐに離れたけど
私は固まって動けなくなった。
「なんでテメェへの態度が変わったかなんて……そんなの俺が知りてェよ。」
キッドが何か言ってたけど、そんなの私の耳には入らない。
数秒間、思考が停止した。
我に帰った時、いつの間にか雨は止んでいて
キッドは窪みを出て歩き始めていた。
「っな!何すんのーーー!!!」
叫びながら私は走って後を追う。
「うるせェな。帰るぞ。」
「意味わかんない!信じられない!!キッドのバカ!!」
追いついて、キッドの腕をバンバンと叩く。
「うるせェから塞いだだけだろ。うろたえすぎだ。まさか初めてだったか。また村の掟か。」
「残念でした!初めてじゃないです!」
「そうかよ。つまんねェな。」
怒る私を見てキッドは笑っていた。
その笑顔も。
時々見せる優しさも。
不意打ちのキスも。
キッドはずるい。
本当にまずい。
このままじゃ
こいつを好きになってしまう。