第五章
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
人攫いに捕まったのとは別の理由で
昨晩は結局ほとんど眠れなかった。
朝食を終えると、皆は島へと降りて行った。
私は洗濯を終わらせ、掃除をする。
何もしないでいると、余計なことを考えてしまいそうだったので、船内の仕事に没頭した。
仕事をしながらも、結局頭の中はそのことでいっぱいだった。
私はキッドに恋をしてしまったのかもしれない。
もしそうなら、それはあってはならないことだ。
たくさん考えて、無理やりある結論に至った。
それは気のせいだ、と。
昨日、これまで見たことないキッドの意外な一面を見て、ドキドキしてしまっただけだ。
深い意味はない、と。
そう決め込んで、それ以上は考えないようにした。
お昼過ぎ。
昼食は皆街で済ませてくると言うので
自分の分だけをさっと食べると、すぐに暇になった。
借りた本を甲板で読みながら過ごす静かな午後。
こんなにのんびりと船の上で過ごすのは
初めてかもしれない。
いつもはキッドが我が物顔で寝そべっているリクライニングチェアに、足を伸ばして寄りかかる。
気持ちいい。
「おい。」
急に影になったかと思うと
上から顔を覗かれた。
「……なんで?」
不機嫌そうに仁王立ちしているキッドがそこにいた。
「腹減った。昼飯まだかよ。」
「もしかして、ずっと船にいたの?」
「眠かったからな。部屋で昼寝してたんだ。」
「そうだったんだ……」
私の脳裏には、再び先ほどまで悩んでいたことが浮かび、顔が熱くなった。
首をふるふると振ってそれを頭から追い出す。
「昼飯の時間とっくに過ぎてんじゃねェか。」
「ごめんなさい。誰もいないと思って簡単に済ませちゃったの…今すぐ作るね!」
キッチンへ行こうと立ち上がると
腕を掴まれる。
「いや、いい。」
急に触れられてドキンとした。
「食いに行く。付き合え。」
そのまま腕を引っ張られる。
「えっ!街に行くの?私も!?」
「もう放ったらかしにしねェから安心しろ。」
「そうじゃなくて……」
今キッドと2人になるのはまずい気がする。