第三章
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お前こんな夜に男の部屋にのこのこ来て、平気でこんなとこ座りやがって。しまいには煽るようなこと言って、何されても文句言えねェぞ。」
シーツに押し付けられた両腕はぴくりとも動かず、息がかかる距離でキッドに睨まれて、目を逸せない。
ヤバイ。
キッドにお礼を言いたくて来たけど
確かに軽率な行動だった。
「それにお前、最初に言ったな。『何でもする』ってよ。」
「……言ったっけ?」
「とぼけてんじゃねェぞ。俺に歯向かわないとも約束したろ。」
「………」
「この意味がわからないほどバカじゃないよな?」
「……はい…」
キッドは私の両腕を頭の上でまとめて左手で抑えると、空いた右手でTシャツの中に手を入れる。
「待って!待ってよ!!」
「色気のねェ声出すな。萎えるだろ。」
キッドは構わず胸の膨らみを掴む。
首筋に顔を埋められてくすぐったい。
覚悟はできていた、はずだった。
この船に乗せてもらうと決めたときから
いつかこういう時がくると思っていた。
でも……
「やっぱりダメ!キッド!やだやだ!!」
「だからてめェに拒む権利はねェんだよ!」
「初めてなんだもん!!」
キッドよりも大きな声を出してそう言えば
一瞬動きが止まった後、服から右手が抜かれ、両腕も解放された。
隣に座ってフーッと息を吐くキッド。
「……嘘つけ。」
「嘘じゃない。」
私は服を直しながら起き上がる。
「婚約者がいるんだろ?」
「そうだけど…彼とはまだしてない。」
「そんなわけあるか。どんだけ奥手な野郎だよ。」
「ちゃんと結婚するまでそういうことはしないの。」
「……また村の掟か。」
「そう。」
キッドは頭をガシガシと掻く。
きれいに逆立てられていた髪が乱れた。
「……お前部屋に帰れ。」
「……ごめんなさい。」
「謝るな。」
キッドは立ち上がってドアを開ける。
「さっさと出てけ。」
「……わかった。おやすみなさい。」
私が部屋を出ると、バンっとドアが壊れそうなほど乱暴に閉められた。
怒ってる。
それはそうだ。
何でもする。
その約束で船に乗せてもらってるのに
私は約束を果たせなかった。
両腕と左胸に
キッドの力強い手の感触が残ってる。
ただ不思議なことに
あんなに乱暴に扱われたのに
怖い感じは全くしなかった。