第三章
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その日の夜。
シャワーを浴びながら
昼間のことを思い出す。
改めて海賊の恐ろしさを思い知った。
あんな風にいつ殺し合いが始まってもおかしくないんだ。
キッドが気付いて助けに来てくれなければ
確実に私は命を落としていた。
私を背に戦うキッドの大きな背中。
とてもたくましくて、守られているようで
安心できた。
そういえば私、お礼を言ってない。
普段は意地悪だけど、見捨てないで助けてくれたことには変わりない。
ちゃんとお礼を言わなくちゃ。
お風呂から上がって、そのままキッドのところへ向かう。
船長室に入るのは初めてだった。
トントン——
「おう。誰だ。」
ノックをすると、中からヤツの声が聞こえた。
「ミドリです。」
「……開いてるぞ。」
少し面倒臭そうな返事が返ってきて
ドアを開けて中に入る。
キッドはひとりでお酒を飲んでいたようで
テーブルにお酒が置かれ、その横の椅子に座っていた。
「何の用だ。」
他に椅子がなかったので、私はベッドに腰かけた。
「あの…ちゃんとお礼を言ってなかったと思って……」
「礼?」
「今日は危ないところを助けてくれて、ありがとうございました。」
頭を下げる。
いつもは生意気な私が、今は素直なせいか
キッドは拍子抜けしたようだった。
「私足手まといでしかないのに助けてくれて、嬉しかった。」
「……てめェが素直だと気持ち悪ィな。」
「何よ、人がせっかく感謝してるのに。」
「まぁ家まで送ってやるって言ったのに、途中で死なれても後味悪いからな。」
「これからは、戦いが始まったらすぐ船内に隠れます。」
「おう、そうしろ。」
「………」
お酒を飲むキッドを見る。
会ったばかりの頃は
偉そうで、デリカシーがなくて、口も悪くて
なんて嫌な奴だろうと思ったけど
今はそうは思わない。
ひねくれていて、少し横暴だけど
時々見せる優しさとか、意外な笑顔とか
少しずつキッドを知っていく上で
そんなに悪い奴じゃないとわかった。
「……何ジロジロ見てんだよ。用が済んだら出てけ。」
「……私、キッドのこと好きになってきたよ。」
助けられたからじゃない。
心の底からそう思ったから
笑顔でそう言ってみた。
と、次の瞬間
景色が回り、目の前にキッドの顔。
その背景に天井とライトが見える。
そう、キッドに押し倒された。