第二章
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夜になった。
皆と夕食を食べて、片付けをして
ひとり静かな船尾へとやって来た。
昼間、キラーたちに村の話をしたせいか
父と母の顔が頭から離れなくなってしまった。
ポケットから出したエターナルポースを見つめる。
私がひとりで海に出ることを最後まで反対していた父が、お守り代わりにと持たせてくれたもの。
本当に島へ帰れるのだろうか。
今なら、両親が海へ出るのを反対していた気持ちがわかる。
海は思った以上に広くて危険で残酷な場所だった。
両親への反抗心から気軽に出て良いような所ではなかった。
こんなことになってやっと気付いた。
あの何も刺激のない平穏な暮らしが、どんなに幸せで恵まれていたか。
後悔の波が押し寄せて、気付けば涙が頬を伝う。
「……帰りたい…っお父さん……お母さん……」
カタッ——
後ろから物音がして、振り返る。
大きな影が動いた。
私は焦って涙を拭う。
「……キッド?」
「……キラーからお前がこっちに行ったから持ってけって言われたんだよ。今夜は冷えるからってよ。」
罰が悪そうな顔をしながら近付いてきて
コーヒーの入ったカップを差し出される。
カップからはユラユラと湯気が立っていた。
「……ありがと。」
「まぁ俺の分のついでだ。」
キッドは船の手すりに寄り掛かり
コーヒーをすする。
……ここにいるつもりなんだろうか。
私もコーヒーを一口飲む。
口に広がる温かい苦味が
心を少し落ち着けてくれるようだった。
「………泣き虫女。」
海を眺めながらポツリとキッドが言った。
やっぱり見られてたか。
「……格好悪いところ見られちゃったな。よりによってあんたに。最悪。」
「あぁ、すげぇ格好悪ィな。」
「うるさい。あっち行け。」
キッドとは反対へ顔を逸らすと
頭に温かい感触。
ゴツゴツとして大きなキッドの掌だった。
髪をくしゃくしゃとされた後
ボン、ボン、と2回叩かれた。
乱暴だし、少し痛い。
「……もしかして、慰めてくれてるの?」
「………」
振り返って顔を見れば、すぐに逸らされる。
「あんたが優しいと気持ち悪い。」
「うるせェな。女に泣かれるほどうっとうしいもんはねェんだよ。」
「悪かったわね。」
気付けば私は笑顔になっていた。