第二章 〜ともに〜
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林を抜けて街へ出る。
2人の行きつけらしい飲食店へ入ると
店員さんも慣れたように奥の個室へと通してくれた。
ご飯屋さんなんて何年ぶりだろう。
子どもの頃、両親と数回来ただけしか記憶にない。
2人は慣れたように注文していくが
私はメニューを見ても何を頼んでいいやら…
「お客様は?」
「えっと……」
店員さんに聞かれても答えられずにいる私を見兼ねて
「おれと同じモンだ。」
クロコダイルさんが助け舟を出してくれた。
「お、おいしいっ…」
その美味しさに思わず涙が出そうになる。
「大袈裟だな。」
私のリアクションにダズさんが引いている。
「ごめんなさい…こんなご馳走、私初めてで…」
「感激しているとこ悪いが、お前のことを話せ。」
「私のことを?」
「こうなるまでの経緯を聞いておく権利が俺たちにはある。お前はなぜ奴隷になった。」
確かに、私はこの恩人達に
自分の生い立ちを話すべきだ。
どんな生活が待っているかはわからないけど
しばらくお世話になるのだから。
私は何も隠さず
これまでのことを全て2人に話した。
ーーーーーーーーーー
10年前。
私は10歳のときに両親に捨てられた。
正確に言えば売られた。お金のために。
私を買ったのは幼女にしか興味がない金持ちの男だった。
買われた女の子は私の他にも何人かいた。
その男は娘たちを裸にしては眺めて楽しんでいるような人だった。
でも決して手を出してくることはなかったし、衣食住は与えられていたのでなんとか耐えられた。
5年間そんな生活をして、15になるとある店に売られた。
住み込みで働き、毎夜男の相手をする店だ。
私はここで初めて男の生々しい生態を知った。
初めての相手は名前も知らない、顔も覚えていない男だった。
18になってすぐ、店に来た海賊の船長に気に入られ、買い取られた。海賊船での奴隷生活の始まりだ。
そこからクロコダイルさんに助け出されて
今に至る。
「若干20歳の小娘が濃い人生送ってんな。」
「本当に、クロコダイルさんには感謝しかないです。ダズさんも…私を受け入れてくれてありがとうございます。」
「ボスの決めたことだ。」
改めて私は2人に頭を下げた。
「料理はできるか?」
ダズさんに聞かれる。
「毎度飯を食いに出るのが面倒になってきたとこだ。」
「やります!喜んで!」
「部屋もいつも汚ェ。掃除を頼む。」
「はい!任せてください。」
まともな仕事を与えられることが
こんなにも幸せなことだなんて。
私はここにいて良いんだ
存在して良いんだと
言われた気がした。