夜明けのキスを
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シーツの擦れる音で目が覚めた。
「……起こしちまったか。」
右隣には上体を起こし、枕を背にもたれながら葉巻を吸うクロコダイルさん。
窓の外は明るくて
朝を迎えていることに気付く。
いつもと同じ朝なのに
いつもと全てが違う。
心地よい怠さを感じる体。
床で重なる2枚のバスローブ。
私たち、ひとつになったんだ。
「おはようございます。起きてたんですか?」
「あァ。お前の寝顔を見ていた。」
恥ずかしさから布団に顔を隠すけど
上体を起こしたクロコダイルさんに
顎を上げられてキスを落とされた。
いつもくれる目覚めのキス。
「……クロコダイルさん。」
「なんだ。」
「どうしていつも、私が起きるとキスしてくれるんですか?」
フーっと煙を吐くと、彼は静かに話し始める。
「……いつ死んでも悔いが残らねェようにだ。」
「そんな悲しいこと言わないでください。」
「お前はこういう言い方は好きじゃねェか。」
クハハと笑うと、クロコダイルさんは吸い終えた葉巻を灰皿に押し付けながら続ける。
「海賊になってから、俺は何度も死に目にあってきた。監獄生活も経験した。いつ死んでも悔いは残らねェ生き方をしてきたつもりだが、いざそうなったときに惚れた女とキスのひとつもしてねェと悔いが残るだろ。」
鉤爪で優しく私の頬へ触れる。
「こんな考えをするようになったのはてめェのせいだ。」
昨日からクロコダイルさんから
たくさんの愛をもらっている。
私も愛を伝えたくて、たまらなくなる。
「クロコダイルさん…」
「今度はなんだ。」
「大好きです。」
「……わかってる。いちいち言うな。」
柄にもなく照れたのか
視線を逸らす彼が愛おしくて
その大きな体に抱きついた。
この人のそばにいられること
愛されていること
幸福以外のなにものでもない。
この命尽きるまで、そばにいる。
誰よりも愛おしい
私を暗闇から救い出してくれた人。
…fin