夜明けのキスを
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乾かした髪をとかして
何度も鏡の前で確認をする。
スッピンなんてもう何度も見られているし
今更気にしないけど
それでも、少しでも可愛く見られたい。
下着の上に、ホテルに備え付けられていたバスローブを身につけ、浴室を出た。
「お先にいただきました。クロコダイルさんもどうぞ。」
戻ると料理を食べ終えたテーブルは綺麗に片付けられ、部屋の明かりはベッドサイドの手元明かりだけになっていた。
「あァ。」
クロコダイルさんが浴室へ向かう。
私はとりあえず気持ちを落ち着けるように水を飲み、ベッドに腰掛けた。
緊張で、そのまましばらく動けずにいた。
お風呂から戻ってくるクロコダイルさんを
どうやって迎えたらいいのかわからない。
男の人とホテル、なんて
もう何度も経験してきたはずなのに
今の相手は客ではなく、私の恋人。
座って待っていたら、不自然だろうか。
シャワーの止まる音がした。
もうすぐクロコダイルさんが出てくる。
私は結局正解がわからず
布団の中に入って待つことにした。
浴室のドアが開く。
彼が出てくる。
こちらに近付く音がして
ベッドがギシ、と音を立てる。
クロコダイルさんが、私とは反対側の縁に座り
葉巻に火をつけていた。
「……ミドリ。」
静かに低い声が部屋に響く。
「はい。」
クロコダイルさんに背を向けて横になっていた私は
寝返りを打って彼の方を向いた。
「起きていたか。」
手元明かりにふんわりと浮かぶ彼のシルエット。
目が慣れてくると、優しい瞳で見つめられていることに気付いた。
「……眠れるわけないです。」
「いつもは俺の部屋で勝手に寝てるじゃねェか。」
クロコダイルさんは笑った。
私をからかうようなその物言いが
なんだか今は少し安心する。
「いつもとは全然違います。船の上じゃないし、クロコダイルさんの部屋でもない。」
大きな手が伸びてきて頬に添えられると
優しい口付けが降ってきた。
葉巻の香り。
行き場に迷った手は
そっとクロコダイルさんのバスローブを掴む。
と、その手に大きな手が重なった。
「あまり硬くなるな。」
握られた手は優しくシーツに押し付けられ
そのまま指が絡まる。
同時にクロコダイルさんは
私に覆い被さるように上体を沈ませ
身体と身体が重なった。
顔と顔が近い。
目が逸らせない。
「……そんなこと言われたって、緊張します…」
「あァ、わかってる。」
おでこに瞼に頬に鼻先に
ひとつひとつ落ちてくるキスの嵐。
時折り顔にかかるクロコダイルさんの渇ききっていない髪からは
私と同じシャンプーの香りがした。
耳から首筋へと唇が降りてくる。
クロコダイルさんの右手は
腕から肩を降りて、くびれ、太ももへと
優しく、大事なものをいたわるように
私の全身を撫で回した後
バスローブの紐をほどき、中へと侵入してくる。
無意識に吐息が漏れ始める。
彼が触れる箇所、全てが熱い。
身体の中心が熱い。
見つめれば、見つめ返される。
全てが優しかった。
愛しくて、愛しくて。
何度も名前を呼んだ。
何度も名前を呼んでくれた。
彼の動きに合わせて、恥ずかしい声が出る。
全てを受け入れてくれるように
たくさんの口付けをくれる。
熱い。
全身がとろけてしまいそうなほど。
こんなにも優しくて、愛おしくて、幸福な夜は
初めてだった。