夜明けのキスを
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「おいミドリ、もっとつめろ。」
葉巻を吸い終えたクロコダイルさんが手元明かりを消したので
あぁ部屋に戻らなきゃ、と起き上がろうとしたら、意外な一言を言われた。
「あ、はい。」
私はそのままベッドの壁際に移動した。
それが当たり前かのように、クロコダイルさんは布団をめくって私の右隣に横になる。
わ。わ。わ。どうしよう。
まさかこんな状況になるとは思っていなかった。
嬉しいけど、一気に緊張する。
クロコダイルさんは、左腕をこちらに伸ばす。
「頭上げろ。」
言われるがままに頭を上げれば
太く引き締まった二の腕が敷かれた。
そっと頭を乗せる。
腕枕ってやつだ。
私と壁の間ではクロコダイルさんの鉤爪がひんやりとしていた。
「……何黙りこんでんだ。これが希望だったんだろ?」
「あの、そうですけど…部屋に戻れって言われるかと……」
「自分の女を部屋から追い出すバカがどこにいる。」
大人の余裕なのか、こういう嬉しいことを
さらっと言ってしまうからこの人には敵わない。
大好きで、愛おしくて
クロコダイルさんの胸元へ寄り添った。
「全然こういうことしてくれないから、私にあまり興味ないのかと思ってました……部屋にも来てくれないし…」
「悪いな。女を喜ばすのは得意じゃねェんだ。」
ゴツゴツとした指輪がたくさんついた右手で
髪を撫でられる。
気持ちいい。
「これからは、何かしてほしけりゃ自分から言え。」
「……ギュっとしてほしいです。」
髪を撫でていた右手は私の腰に下りてきて
そのまま抱き寄せられる。
ガウンの隙間から覗く素肌が
私の頬に触れた。
滅多にない展開に、私は欲張りになってしまう。
「……キスも…してほしいです。」
顔をあげれば、すぐに唇が降ってくる。
優しく、そっと触れるだけの口付け。
唇が離れると少しの沈黙。
このまま言ってしまおうか。
でも、欲求不満な女だと思われちゃうかな……
「……何を考えている。」
薄暗い部屋の中。
表情なんてよく見えないはずなのに
私が何か迷っていることをすぐに察する。
「このまま……抱いてくれますか?」
言ってしまった。
すごく恥ずかしい言葉なのに
この雰囲気に押されて
そして暗くて顔がよく見えないのをいいことに
ついに言ってしまった。
「……勘弁してくれ。」
クロコダイルさんはため息混じりに答えた。
「そんなデカい船じゃねぇ。壁もドアも薄い。ダズに聞かれてもいいってのか。一切声を出さない自信はあるか。」
「う……」
「……ただ、お前がそういう気持ちになってるってのは悪くねェな。」
クロコダイルさんは指で私の髪を耳にかけると、そこに唇を寄せる。
「次の島に着いたら覚悟しておけ。」
耳元で、低く響く声で囁かれて
全身が熱くなる。
私が返事すらできないでいると
クロコダイルさんは体勢を整えた。
「俺は寝るぞ。」
「はい。おやすみなさい。」
私も目を閉じるけど、眠れるわけもなく
窓から差し込む月明かりに照らされる
クロコダイルさんの寝顔をこっそり眺めていた。