第一章 〜元奴隷の女〜
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「お前を飼ってたクソ共と、このおれを一緒にするな。」
予想外のことだった。
「抱いてもらえないんですか?」
「そんなことのためにお前を連れてきたんじゃねェよ。」
「……じゃあ、誰かに売るんですか?」
「今のところはその予定もないな。」
「そんな…じゃあ…私はどうやってあなたの役に立てば?」
「そうだな…」
クロコダイルさんは葉巻きに火をつけゆっくり吸うと
フーっと煙を吐き出した。
「ここにいろ。」
「……それだけ?」
「おれとダズは定期的に海に出て金稼ぎと情報収集に行くが、必ずここに戻る。その時はおれ達の食事や身の回りの世話をしろ。いない間はここを好きに使うといい。街でもどこへでも好きなところへ行け。必要な金はやる。」
「…そんな……それって……そんなの、奴隷じゃないです…」
「あァ、奴隷じゃねェ。」
ポロッと涙が溢れて
それを隠すように
クロコダイルさんの上着に顔を埋めた。
「お前はもう奴隷じゃねェんだミドリ。好きに生きろ。」
大きな手が少し乱暴に頭に乗せられた。
ゴツゴツとした指輪の感触が残った。
「ここが気に入らなきゃ逃げ出したって構わねェ。」
「…ここにいます。ありがとうございます……」
そう絞り出すのがやっとだった。
子どものように声を出して泣いた。
あの悪夢は終わったんだ。
この人が私を連れ出してくれた。
私の涙がかれるまで
彼は何も言わず
ただ隣に座っていた。