陽のあたる場所へ 〜side story〜
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ダズが部屋へとやってきた。
聞けば、街の市長の息子がミドリに惚れ、
市長が街中ミドリを探させているらしい。
「クハハハ!結構な大物に気に入られたなミドリ。市長の息子か。」
「笑ってる場合じゃねぇですぜ。本気で探されたら、ここが見付かるのも時間の問題だ。俺たちと一緒だと知られたら…」
「まぁ俺たちからミドリを奪おうと、まず海軍に通報されるだろうな。」
「そんな…私のせいで2人がっ……本当にごめんなさい!」
「気にするなミドリ。ダズとは話していたんだが、ボチボチこの島を離れようとは思っていた。その時期が少し早まっただけだ。」
「この島を?」
「もう少し情報を集めてからってことにしたでしょう。ほんとにこの女に甘いんだから、あなたは。」
ダズの言う通りだが、惚れた女に甘くなるのはしょうがねぇだろ。
「苦労かけるな、ダズ。」
「慣れましたんで。もう日が暮れる。奴らのミドリ捜索も今日のところは打ち切りでしょう。夜中に船を出すのは危険なんで、明日の朝ですかね。」
「そうだな。夜中のうちに荷物を積み込もう。夜逃げみてぇで格好は悪いが。」
「格好なんて気にしてる場合じゃねぇでしょ。」
ミドリは自分のせいだと気にしているが
拠点を変えるいい機会だ。
大したことじゃねぇ。
ただ俺たちがここを出るとなったら必ずミドリは選択を迫られることになる。
きっと、ひとり悩むだろう。
ーーーーーー
あらかた荷物をまとめ終え
キッチンへと一服しに行く。
夕食の支度をしているミドリと話をするためだ。
「ミドリ、俺たちは海賊だ。こうやって追われるのも慣れてるから全く問題はない。でもお前は違う。」
「……はい…」
表情も、声も暗い。
夕食を作りながらずっと悩んでいたんだろう。
俺たちと来るか、それとも……
「……お前はここに残ることもできるんだ。」
「………。」
「市長の息子と一緒になるのも一つだ。確実に安泰な生活が待っている。」
そんなこと、本当はさせたくないくせして
あえて選択肢を与えるように格好付けたことを言ったのは
少しでも余裕のある大人を演じたかったからか。
「そんなの……絶対に嫌です。」
ミドリの声がかすれ、顔を見れば泣いている。
「クロコダイルさんっ…私、どうしたらっ……2人の荷物にはなりたくないけど…そばにいたいです……」
んなこたぁわかってる。
でもこれはミドリの問題だ。
俺が決めることじゃねぇ。
俺は本心を隠して、いつものように「好きにしろ」と言うしかない。
だが、その言葉がなかなか出てこない。
それを言ったら、ミドリは俺の元を離れるかもしれない。
もう二度と会うことはないかもしれない。
気付くと俺は、持っていた葉巻を灰皿へ置き
その手をミドリへ伸ばして
そのまま抱き寄せちまった。
「俺と来い。」
自分がここまで
独占欲の強い男だとは知らなかった。
「俺のそばにいろ。」
俺の腕の中で声を出して泣くミドリを
このまま離したくねぇと本気で思った。
こいつが、そばにいたいと言ってくれるなら
要は俺が幸せにすりゃいい話だ。