陽のあたる場所へ 〜side story〜
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麦わらたちが島へやってきた。
面倒なことにミドリと仲良くなっちまって
そのまま宴になった。
馴れ合うつもりはないが、たまには大勢で酒を飲むのも悪くない。
その夜、風呂で今日のことを思い出す。
「どんなに悪いことをしてきたとしても…私はクロコダイルさんが大好きなんです。」
ミドリのこの言葉の意味はなんだ。
ただの恩人としてか。
それとも…やはり俺の思い違いじゃねぇのか。
「お水ですか?」
「あぁ。悪ぃな。」
いつものように俺の風呂上がりに水を持ってくると、珍しく今日は隣に座るミドリ。
「……あの、ロビンさんとはどういったお仕事をしていたんですか?」
唐突な質問が投げかけられた。
「なんだ…妙なところに興味を持ったな。」
「パートナーだったって聞いて。」
「俺が立ち上げた犯罪組織の副社長だったんだ。ほとんど組織の指揮はあの女に託していた。あいつは頭がいい。全て完璧にこなしていたな。」
さすがに褒めすぎたか。
ミドリはそれを聞いて眉間に皺を寄せた。
「……社長と副社長以上の関係はなかったんですか?」
「……何が言いたいんだミドリ。」
「……ごめんなさい。気になっちゃって…」
これまでの疑惑が確信に変わる。
まさかこいつは本当に俺のことを……
確信した途端、急にまた鼓動が速くなる。
いい歳してこんなことで動揺して情けねぇったらねぇ。
落ち着けるように煙をゆっくりと吐いた。
「お前が想像しているようなことはねぇ。」
頭を撫でてやり、動揺を悟られないうちにさっさと部屋へ戻りたかったが、続く質問に立ち上がるタイミングを失った。
「……私が昼間ナミさんたちに言ったこと、覚えてます?」
「急に話が飛ぶな。何の話だ。」
とぼけてみせたが、もちろん覚えている。
先ほどまでずっと頭にあった言葉のことだろう。
「私はクロコダイルさんが大好きです。」
頬を赤らめながら、真っ直ぐに目を見て言ってきやがるから
目をそらすことができねぇ。
「命の恩人だからじゃありません。ちゃんと一人の男の人として、あなたが好きです。」
年甲斐もなく、更に鼓動は速くなる。
「今も隣にいるだけで、すごくドキドキしています。」
恥ずかしそうにミドリが下を向いたのをいいことに、落ち着けるように葉巻を吸う。
「だから私の知らないクロコダイルさんを知っているロビンさんに、正直嫉妬しました。」
気持ちをぶつけてくるこいつに
なんて応えてやったらいいのか
言葉を必死に探す。
「大好きなんです。」
涙をこぼしながら再び真っ直ぐに見つめられて
思わず手が出そうになる。
このまま抱き締めて、唇を押し付けて
ミドリの全てを俺のものにしてしまうか。
そう考えたが、ギリギリで理性は保たれた。
「あの……クロコダイルさん、きっと気付いてましたよね。」
「……あぁ、薄々な。お前の気持ちはわかったが、それで俺にどうして欲しい。」
「……え?」
「俺の女にしてほしいか。抱いてほしいとでも言うのか。」
「……考えてませんでした。」
「……お前らしい。」
その答えに嬉しくなる。
やはりこいつはいい女だ。
「クロコダイルさんの女って…想像できないというか、ちょっと緊張するというか……私はただ…私の気持ちを知っていて欲しかったんです。」
「そうか。」
「あと…お礼が言いたくて。」
「……?」
「私はこれまでの人生で、人を好きになることはありませんでした。こんな風に誰かのことを特別で、大切で、そばにいたいって思ったのは初めてです。こんな気持ちにさせてもらえて、感謝しています。」
………俺と同じだ。
俺も、こんな風にひとりのことを……
ただ、今はこの気持ちを押し付けるべきではない。
「あの……迷惑じゃなければ、好きでいてもいいですか?」
「……勝手にしろ。俺は寝る。」
「はい。おやすみなさい。」
笑顔を向けるミドリを残して
自室へ戻る。
ミドリからの告白に嬉しく思わないわけがない。
俺の気持ちを言うのは簡単だ。
だが、俺とミドリは仲間になったわけではない。あいつは海賊じゃない。
俺はいずれこの島を出る。
その時ミドリがどうするかはあいつの自由だが、この島に残った方が平穏な暮らしができる。あいつにとってはそれが一番だ。
その時のことを考えると
俺の気持ちは言うべきじゃねぇんだ。