陽のあたる場所へ 〜side story〜
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
海に出て10日目。
やっとアジトのある島に近付いてきた。
テーブルで書類に目を通していると
後ろで小さな音がした。
振り返れば、あのてるてる坊主が床に落ちている。
紐が切れたようだ。
「………。」
嫌な予感がする。
紐を結び直し、再び元の場所へ付け
甲板へ出ると、もう島が見えていた。
「クロコダイルさん、船が。」
「あ?何だ?」
「アジトの海岸から船が一隻出て行きますぜ。」
「……嫌な感じだな。」
「追いかけますか?」
「……まずミドリの無事を確認だ。」
「はい。」
そう。ミドリが無事ならあんな船はどうだっていい。
とにかく元気なあいつの姿を確認するまでは
なんだか落ち着かねえ。
胸騒ぎがする。
ーーーーーー
嫌な予感は的中した。
アジトにミドリの姿はなかった。
ダズとともにさっきの船を追いかける。
間に合え。無事でいろ。
運良く風と波が味方をし、前方に船をとらえる。
いても立ってもいられなくなり
俺はひとりその船へと乗り込んだ。
「だ、誰だてめぇ!何だ急に!どこから現れた!!」
さほど大きくもない船の甲板にたった2人。
見るからに雑魚だ。
「女と宝を探しているんだが。」
「女って…もしかして」
「バカ!黙ってろ!」
「見たところてめぇら人攫いだな。知らねぇか?名前はミドリ。割といい女なんだが。」
「こいつ…元七武海だ。」
「なんだと!?あいつは七武海の女だったのか?」
「ここにいるんだな。」
「ひっ…」
手応えのねぇやつらを片付け
手当たり次第扉を開けていく。
一番奥の部屋で探し人は見つかった。
下半身を露わにした男2人が、俺の姿に焦って立ち退けば
「……クロコ…ダイル、さん…?」
焦点の合わない瞳で俺を見るミドリ。
服は剥ぎ取られ、腕は紐で繋がれていて
その姿を目にした瞬間、俺はこれまでに感じたことのない怒りで体が震えた。
「クロコダイルだと!?」
「やべぇ!逃げるぜ!」
「逃すわけねぇだろ。」
鉤爪の毒で2人を制裁すると、苦しみ悶える。
ミドリの痛みはそんなもんじゃねぇ。
「お前らはその毒に苦しんで死ね。」
苦しむ男たちが静かになる頃
ミドリも意識がしっかりしてきたようだった。
「……クロコダイルさん…?」
「あぁ、俺だ。ミドリ、無事……じゃねぇか。」
「…っ!ダメ!ダメです!見ないで!見ないでくださいっ!!」
顔を背けるミドリ。
自分の哀れな姿を見られたくないんだろう。
手首の紐を切り、コートをかけてやると
その中で泣き崩れる。
たまらず抱き締めていた。
俺の判断ミスでこうなった。
アジトに戻らず、すぐにこの船を追っていれば、ここまでひどいことにはならなかったかもしれない。
いや、あと1日でも…1時間でも早く戻ってきていれば。
その前に、最初からひとりにするべきじゃなかった。
俺の手が余るほど小さく華奢な体を前に
後悔の念が次々と押し寄せる。
「……これはお前をひとりにした俺のミスだ。悪かった。」
心の底から人に謝る、なんてのは初めてのことだ。
こいつの存在が
俺の中で大きく、これ以上ないものへとなってきているのは確かだった。
「帰るぞ。」
抱き抱えると、素直に抱きついてきて
「帰りたい」と言うミドリに
柄にもなく鼓動が速くなるのを感じた。