陽のあたる場所へ 〜side story〜
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ミドリの生い立ちを聞いた。
ロクでもねぇ親のもとに生まれてきちまったせいで、ひどい暮らしを強いられてきたもんだ。
だかそんな人間は他にも五万といる。
同情する気はねぇが、連れ出したからには意地でもこの女に人間として当たり前の暮らしをさせてやる。
こうして俺たちとミドリの
妙な共同生活が始まった。
ーーーーーー
ここでの生活に慣れてくるにつれて
ミドリの顔色は良くなり
表情も性格も見るからに明るくなった。
不思議な女だ。
俺だけでなく、普通の女は怖がって近付かないダズとも割と早く打ち解けていた。
俺たちが機嫌よさそうに笑えば
自分も嬉しそうに笑っていた。
街で暴れる海賊と戦いに行くだけで
泣きそうになり
傷付いた俺たちの体を見れば
自分のことのように辛そうな顔をした。
時折強引だが、その全ては俺たちのためであることがよくわかる。
医学を学びたいと言い出したときは、目標を見つけるまでになったその強さに嬉しくなった。
むさくるしい男2人で送っていた生活が
こいつが来てから明るくなったのは確かだ。
ーーーーーー
航海に出る日。
安全とは言えない旅にミドリを連れて行くわけにはいかず、アジトに置いて行くことにした。
「……おい、なんだそれは。」
出航の準備をしていればミドリが船にふざけたものを付けている。
「作ったんです。あの…クロコダイルさんは雨が苦手だから…」
「俺は雨が苦手なわけじゃねぇ。嫌いなだけだ。」
「傑作ですね。とても元七武海が乗ってる船とは思えねぇ。」
ダズが笑う。
こいつもミドリの影響か、前より笑うようになった。
「すぐ外せ。俺に恥をかかす気か。」
「……ごめんなさい。」
そんなくだらねぇやりとりを終わらせて出航する。
島を離れても、見えなくなるまで
港にはミドリの姿があった。
舵をダズに任せて部屋に入ると
ミドリの作ったてるてる坊主が窓際から俺を見ていた。
「やられた……」
自然と笑みがこぼれる。
ーーーーーー
海へ出て1週間。
「もう十分だな。そろそろ帰るか、ダズ。」
「そうですね。」
必要な情報も、金も宝も十分奪った。
永久指針で航路を確認し、帰路へと着く。
ふとダズが思い立ったように言う。
「今回はボスの嫌いな雨が一度も降りませんでしたね。」
「……そういやぁそうだな…」
部屋の窓際に付けられた、てるてる坊主を思い出す。
「……まさかな…」
頭からそれをかき消せば
次にあいつの顔が浮かんだ。
この旅の途中
何度ミドリの顔が頭に浮かんだことか。
今頃は飯でも食ってる時間か。
あいつのことだ、俺たちがいないから節約だなんだ言って何も食ってねぇかもしれない。
薬草はうまく売れているのか。
ひとりでやれているのか。
意識しないようにすればするほど
ミドリのことが頭から離れない。
こんな歳になってまでみっともねぇ。
ひとりの女のことばかりで頭がいっぱいになるなんてな。