陽のあたる場所へ 〜side story〜
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街へ着き、店へ向かう間も
店で服を選ばせている間も
常に俺の顔色ばかりを伺ってビクビクしてやがる。
俺はその態度に少々イラついた。
これから俺に取って食われると思っているに違いない。
だが、気まぐれだとしてもこの女を連れてきたのはこの俺だ。
面倒だからと投げ出すわけにはいかねえ。
「クロコダイルさん、お久しぶりです。今夜、いつもの場所で待っていても?」
女を着替えさせている間、店員が話しかけてきた。
「いや、今夜は無理だ。」
暇つぶしに何度か抱いてやった女だ。
会うたびに色目を使ってきやがる。
最近は面倒になってきて適当に断っていた。
今回も寂しそうにする女の表情には気付かない振りをして、会計を済ませるとすぐに店を出た。
ーーーーーー
アジトに帰り、女の名前を聞いた。
「ミドリ、今日からここがてめぇの部屋だ。好きに使え。」
言いながら何気なくそばにあったベッドに腰掛ければ、ミドリは焦ってベッドに上がり、するりと服を脱いでみせた。
その姿に俺は一瞬言葉を失う。
「……てめぇ何してやがる。」
「あの…全部脱ぎますか?それとも脱がせてくださいますか?」
きっと何度も使ってきた言葉なんだろう。
そのセリフに、イラつきながらも哀しくなった。
慣れたような言葉とは裏腹に
体も声も震えていた。
この女はこうして生き残ってきたんだろう。
コートを脱ぐとビクッと全身を震わせて身構えている。
だからそんなつもりはねえよ。
「お前を飼ってたクソ共と、俺を一緒にするんじゃねぇ。」
なるべく優しくコートをかけて
その素肌を隠してやれば
それがあまりにも予想外だったのか
ポカンと口を開けて俺を見る。
「抱いてもらえないんですか?」
「そんなことのためにお前を連れてきたんじゃねぇ。」
「……じゃあ、誰かに売るんですか?」
「売る気もねぇ。」
「そんな…じゃあ…私はどうやってあなたの役に立てば?」
体を差し出す以外に自分のやることがわからねぇのか。
なんてつまらねぇ人生を送ってきたんだ。
「ここにいろ。」
「……それだけ?」
「俺とダズは定期的に海に出て金稼ぎと情報収集に行くが、必ずここに戻る。その時は俺達の食事や身の回りの世話をしろ。いない間はここを好きに使うといい。街でもどこへでも好きなところへ行け。必要な金はやる。」
「…そんな……それって……そんなの、奴隷じゃないです…」
「あぁ。奴隷じゃねぇ。」
ミドリの目から涙が溢れる。
見られたくなかったようで、俺のコートでそれを隠すように顔を埋める。
コートが濡れるじゃねえか。
普段の俺ならそう言葉を投げかけただろうが
そんなこと言う気にはなれず
怖がらせないように、一度だけ髪を撫でた。
「お前はもう奴隷じゃねえんだミドリ。好きに生きろ。」
これまで死にたいような毎日に耐えてきたんだろう。
ガキみたいに泣きじゃくって
扱い方に困るじゃねぇか。
ただそのまま放っとくわけにもいかず、隣で葉巻を吸っていれば
泣き疲れたのか、膝を抱えたまま静かに眠っていた。
横に寝かせてやり、握りしめている俺のコートはそのまま掛けておいてやった。
なぜか放っておけねぇ
こんな女は初めてだ。