最終章 〜船出〜
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泣きそうになるのを必死に堪えながら
手を伸ばして
クロコダイルさんの頬を両手で包む。
「ちゃんと…言ってください。」
右手で私の左手を掴むと、優しい力で引かれ
私は自然と膝をついて
クロコダイルさんに抱き寄せられた。
前に長く投げ出された左足と
折り曲げ立てられた右足の間に
私の体はすっぽりとおさまる。
座っている彼と膝立ちの私は
ちょうど良く高さが合って
彼の右肩に頭を預ける。
その耳元で
低い声がしっかりと響く。
「お前を愛してしまった。」
恥ずかしすぎて
顔を見られなくて
首に両腕を回して強く抱き締めた。
「私も愛しています。」
クロコダイルさんの右手は髪を撫でてくれて
左の鉤爪は背中に添えられている。
「本当にこんなオッサンでいいんだな。」
「ふふ、言われたこと気にしてるんですか?」
おかしくなって顔を見ると
近い距離で目と目が合う。
「恥じるような歳の取り方はしてきてねェつもりだが。」
「……誰よりもかっこいいです。」
愛しさが溢れて止まらなくなって
右頬にそっと口づけをする。
「積極的だなミドリ。」
「実はずっと我慢してたので。」
「初めはお前のような小娘なんかに惚れるなんざ信じたくなかったが……」
「失礼ですよ。」
「悪くねェ。」
鉤爪で顎を上げられたかと思うと
深く深く、唇が押し付けられる。
クロコダイルさんとの初めてのキス。
こんなに優しいキスがあるなんて
私は知らなかった。
角度を変えて
何度も何度も
噛み付くように、ついばむように
でも口内を犯しにくることはなくて
とても熱くて、優しいキスに
私は全身の力を抜かれていった。
息をするのもやっとなまま
必死でクロコダイルさんについていく。
唇と唇でお互いの全てを感じとるように。
名残惜しそうに唇が離れれば
最後は鼻に、頬に、おでこにと
口付けを落としてくれた。
「このくらいにしとかねェと、やめられなくなるな。」
自分が乱した私の髪を整えながら
クロコダイルさんは笑った。
私は何だか恥ずかしいのと、力が入らないせいで、頷くのが精一杯だった。
真っ直ぐにあなたを見つめる。
見たこともないような優しい目で
私を見つめ返してくれる。
「これからもよろしくお願いします。」
恥ずかしさを誤魔化すように頭を下げると
もう一度抱き寄せられて、髪を撫でられた。
暗闇でどん底だった人生から
私を救い上げて、光を当ててくれた人。
私の愛する人。
永遠なんてない、というけれど
この想いはきっと永遠だ。
船の甲板では
楽しそうに酒と料理を楽しむ3人の姿。
空は快晴。風は追い風。
サー・クロコダイル一味の船は
今日も新世界の海を行く。
…fin