第一章 〜元奴隷の女〜
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街に着く。
大きな街だ。
砂の男はやはり目立つようで
通り過ぎる人みんなが見る。
心なしか、少し怯えた表情で。
その後ろをついて歩く私も
もちろん注目を浴びる。
哀れな女だと思われていることだろう。
誰かこの男から私を助け出してくれるような人は現れないだろうか…
「入れ。」
あるお店の前で立ち止まり、私に入るよう促す。
ここで売られるのか…
覚悟を決めて中に入ると
そこは高価な服屋さんだった。
「いらっしゃいませ。クロコダイルさま、いつもありがとうございます。」
「あァ。今日はこいつの服を頼む。」
品の良い店員さんは顔見知りのようで
にこやかに砂の男を接客している。
「…あの…ここで何を?」
「まずその身なりをなんとかしろ。好きな服を選べ。」
「…私の服をですか?」
「当たり前だ。もちろん靴もだ。必要なら装飾品も、化粧品も揃えろ。」
「……ごめんなさい、私…お金ないんです…」
「バカが。んなこたァ見りゃわかる。買ってやるって言ってんだ。さっさとしろ。」
耳を疑う。
こんな私に服を買ってくれる?
奴隷の私に?
そんなことありえない…
こんな服屋さんに連れてこられたって…
何を選んだらいいのか……
「……悪ィ。適当にあてがってくれ。」
動けないでいる私を見兼ねて
砂の男は店員さんにそう言った。
「はい、お任せください。」
店員さんは手際よく服を選んで
次々と砂の男に見せていく。
砂の男が頷くと何着も紙袋に詰められた。
その袋の中から一着のワンピースとパンプスを手に取り、私に差し出す。
「今すぐこれに着替えろ。着替えたら行くぞ。」
言われるがまま、試着室で服を着替え
お店を出ると、砂の男が待っていた。
「…少しはマシになったか。来い。」
「はい。」
男は私の服が入っているであろう大きな紙袋を2つ抱えていた。
お礼を言うべきだろうか…
そう悩んでいると、ピンときた。
これはきっと、少しでも高く売れるように
私を着飾るためのものだと。
そうでないとしたら、男の人の相手をする店で私を働かせるためだろう。
こんな綺麗なワンピースは初めてだった。
試着室の鏡で自分の姿を見たとき
不覚にも少し嬉しくなってしまった。
またドン底へ突き落とされた気分だ。