〜第九章〜
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次の日の夜9時。
私がいるのは、コビーの部屋の前。
本当に来てしまった。
昼間、たまたまヘルメッポさんに会えて
今はコビーは海には出ていなく、本部にいることがわかった。
この時間ならきっと部屋にいるだろう。
まだ仕事中かもしれない。
疲れて寝ているかもしれない。
別にコビーは会いたくないかもしれない。
いつでも会いに来てと言ってくれたけど、
迷惑かもしれない。
そう思うと、なかなかノックができないでいた。
このまま帰ってしまおうか。
悩んでいると、遠くから足音が聞こえる。
誰か来る。
こんな時間にここにいたら怪しまれる。
トントン——
勇気を出してノックをする。
ガチャ——
静かにドアが開いた。
「ミドリ……」
コビーは驚きながらも、中へ入れてくれた。
「こんな時間にどうしたの?」
いつものジャージ姿ではなく、Tシャツにスウェットという格好。
「ごめん、もう寝るところだった?」
「あぁ、大丈夫だよ。寝る前に少し書類を片付けてたところ。」
コビーは少しかがんで
心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「何かあった?」
久しぶりに会えた大好きな人の顔が目の前にあって
なんだか涙が溢れそうだった。
「えっと何もないんだけど…」
確かにこんな夜にいきなり来たら心配にもなるだろう。
必死に部屋まで来た理由を探すけど
なかなかうまい言い訳が思い浮かばないので
「会いたくなっちゃって……」
素直にそう言うしかなかった。
恐る恐るコビーの顔を見上げれば
ふわりと抱き締められた。
「寂しい思いさせてごめん。僕もずっと会いたかった。」
いつもと変わらない、優しい腕の中。
久しぶりのその温もりが嬉しくて
腕を背中に回してぎゅっとした。
「急に来てごめんなさい。夜なら部屋にいるかと思って。」
「謝ることない。来てくれて嬉しいよ。」
腕に力がこもる。
コビーの胸に顔を埋める。
こうやって抱き締め合うだけで、会えなかった時間の寂しさが満たされる。
私の欲しかったもの。