〜第六章〜
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「……やっぱり、もう一回抱き締めていいかな?」
コビーが両腕を広げてくれたので
返事の代わりに今度は私から、その腕の中に飛び込んだ。
2年前は背丈がそんなに変わらなかったのに
今では頭ひとつ違う。
肩幅も広くなって、厚みも増して
大きくて硬いその胸に顔を埋める。
背中に手を回せば
上半身のそのたくましさに“男の人“を意識してしまって、鼓動がうるさくなってくる。
コビーって、こんなに大きかったんだって
戸惑いさえ生まれる。
コビーの腕がゆっくりと遠慮がちに
私の背中に回された。
「……ミドリて、こんなに小さかったんだね。」
同じようなことを考えていて、笑みが溢れた。
「コビーが大きくなったんでしょ?」
「なんか細いし…思いっきり力入れたら壊しちゃいそうだ……」
そっか。だから背中の腕が妙に優しいんだ。
物足りないくらい。
「大丈夫。壊れないよ。」
顔を上げるとコビーの顔が目の前で
あと数センチで触れてしまいそうな距離。
恥ずかしくて私はすぐにまた下を向いた。
「……壊れないから、もっとちゃんと、ギュッてして?」
私ってこんなに甘えん坊だったのか、と自覚して恥ずかしくなる。
それとも相手がコビーだから?
全てを包んでくれる優しさに
もっともっとって、欲張りになっちゃう。
コビーの腕に力がこもって、2人の体の隙間はゼロになった。
心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい密着して
ドキドキするのに、安心する。
私の肩に顔を埋めるコビーの息づかいが
耳元でくすぐったい。
片方の手は私の腰に回されて
もう片方の手はずっと髪を撫でてくれる。
ずっとこうしていたい。
そう思わずにはいられなかった。
コビーも同じ気持ちだったら嬉しいな。
名残惜しそうに腕が離れれば
今度は手を繋がれた。
「時間大丈夫?もう少しいいかな。」
「大丈夫だよ。」
すっかり夜になり
明かりが灯った中庭でベンチに座る。
しばらく話をしなかった間の出来事
任務で海に行ったときのこと
いろいろな話をした。
その間、ずっと手を握っていた。
「あのさ、また誘っていいかな…その…デートに。」
コビーが少し照れながら頬を掻く。
「もちろんだよ。だって私たち、もうそういう仲でしょ?」
「……そういう仲か…僕その、か、彼女とか初めてで……」
「私もだよ。」
「嬉しいんだけど…なんか今までよりずっと緊張してる。」
「私も一緒。」
「でも全然嫌な緊張じゃないな。」
「うん。」
2人、顔を見合わせて
どちらからともなく笑う。
「彼女って、どういう風にしたらいいのかわからないけど……大事にするから。」
繋がれた手に力が入った。
「絶対、大事にする。」
「ありがとう。私もコビーを大事にする。」
コビーが背もたれに背中を預けて空を見上げたので、私も同じようにする。
星が綺麗。
吹き抜ける夜風が気持ちいい。
何も喋らなくても
周りの空気が優しくて
しばらく2人で星を眺めていた。
「……そろそろ戻ろうか。」
「そうだね。なんだか離れがたいな……」
「うん……」
中庭の出口で立ち止まると
繋いでいたコビーの手を顔の前で両手で握る。
「じゃあ、おやすみ。」
「うん。おやすみ。」
名残惜しそうに手を離し
それぞれの部屋へ向かった。
離れてから一度振り返ると
ちょうどコビーも立ち止まってこちらを見て
照れ臭そうに手を振る。
私も笑顔で手を振り返した。