〜第五章〜
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「ここ、この時間は全然人がいないんですね。」
「あぁ、静かでいいから時々仕事終わりに寄るんだ。」
グレイスさんは吸っていたタバコの火を
灰皿で消した。
「悪いな、急に呼び出して。」
「大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
いつもに増して真面目な顔付きになって
私を見つめる。
普段の先輩とは違う雰囲気に少し戸惑ってしまう。
膝に置いていた手に、グレイスさんのそれが重なった。
「俺と付き合わないか?」
予想だにしなかったその言葉に
一瞬息が止まる。
「えっ……」
「ずっと好きだった。君がここに来たときから、彼女になって欲しいと思っていた。」
私、男の人に告白されてる。
人生で初めて起こったその出来事に
頭がついていかない。
「僕の彼女になってくれないか?必ず僕が幸せにする。」
手をぎゅっと握られる。
初めての、コビー以外の男の人の手。
動揺して、心臓がドキドキとうるさい。
「えっと……」
必死に言葉を探す。
ーーーーーー
その頃
コビーとヘルメッポは、珍しく定時で仕事が終わり
コビーの部屋で飲もうと廊下を歩いていた。
「ヘルメッポさん、僕ずっと悩んでたけど、決めました。」
「おうミドリのことか。」
「……どうしてわかるんですか?」
「お前の悩みなんてミドリのことだけだろ。」
「まぁ、そうですね。」
「やっと告白する気にでもなったか?」
「そうですね…それは、心の準備ができたら……」
「そんな悠長なこと言ってると、あの上司に先を越されるぜ?」
「グレイスさんですか……」
「ミドリに告白するって宣言されたんだろ?もしかしたら最悪もう付き合ってたりするんじゃねぇか?」
「でもヘルメッポさん、ミドリとグレイスさんはくっつかないって言ってたじゃないですか!」
思わず立ち止まるコビー。
「そうだが、お前がミドリにあんな態度ばっか取ってたら、ミドリだって気が変わるかもしれないだろ。」
「それは…確かに僕が悪いですけど……」
コビーがシュンとしていると、
ヘルメッポはふと窓の外に目をやる。
その廊下の窓から下を見ると中庭があり
ベンチに2人腰掛けているのが見えた。
「おい。」
「へ?」
ヘルメッポが親指を立てて窓の外を指すと
コビーも窓から中庭を覗く。
そこにはグレイスとミドリの姿。
2人の手がミドリの膝の上で重なっているのもしっかり確認できる。
「言わんこっちゃねぇ……」
「………ごめんなさい、ヘルメッポさん。先に部屋で飲んでてください!」
そう言い残すとコビーは猛スピードで廊下を走り出す。
「……窓開けて剃使った方が速ぇのに…」
ミドリのこととなると冷静でいられない親友の姿に、ヘルメッポは苦笑をもらした。
〜第六章へ続く〜