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見習いの私の仕事といえば
医療器具の洗浄やお手入れ、簡単な事務仕事、病室の清掃など雑用ばかり。
それでも空いた時間に医療班の皆の技術を勉強させてもらって、とても充実した日々になっていた。
そんな毎日を過ごして、一週間が経つ頃
お昼休憩をもらって食堂に来ると
見覚えのあるピンクの髪が目に入った。
「コビーさん?」
「ん?あ!ミドリさん!こんにちは。」
「お隣いいですか?」
「もちろんです。」
「おいコビー、誰だこの可愛い子。紹介しろ。」
コビーさんの隣には金髪の男の人がいた。
「先日医療班に入ったミドリさんです。ミドリさん、こちら僕の同期のヘルメッポさん。」
「はじめまして。医療班で見習いしてます。」
「お、おう。なんだなんだコビー。お前俺の知らない間に女の子と仲良くやってたのかよ。」
「そんなんじゃないですよ!ミドリさんが基地に来た日に案内をしただけです。」
「お前ばっかりずりぃぞ。」
「その日ヘルメッポさん寝坊したんじゃないですか!」
同期というだけあって、仲の良い2人に笑みがこぼれる。
「いいなぁ。同期がいるのって楽しそうですね。私はひとりだし、同い年はコビーさんしかいないし。」
「ミドリさんだって僕らの同期ですよ。入ったのは一日違いだし。班は違うけど…僕らで良ければいつでも話聞きますよ。」
「嬉しい。ありがとうございます。」
ニコニコしながら話をする私たちを
不思議そうにヘルメッポさんが見る。
「…おめぇら、同い年なのになぜ敬語なんだ?」
「……そういえば、そうですね。」
「初めて会った時からそのままでした。」
「じゃあこれからは敬語はなしで。」
「はい。」
言われるまで気付かなかったのがおかしくなって、お互い顔を見合わせてまた笑う。
「……なんか俺邪魔みたいだから、先に戻ってるな、コビー。」
「次は水中訓練ですよ。ちゃんとサボらないで来てくださいね。」
「わかってら!」
ヘルメッポさんは食べ終わった食器を持って行ってしまった。
私たちは食事をしながら
その後もしばらく会話を楽しんだ。
「それにしても、コビーは体中傷だらけだね。」
敬語をやめて、呼び捨てで呼ぶことに少し照れつつも、お互いだんだんと慣れてきた。
「訓練が毎日厳しくてね。生傷が絶えないよ。」
「ちょっとした傷でも、医療班に来て診てもらいなよ。ちゃんと手当てした方が治りも早いし、跡も残りにくいよ。」
「うーん、でも僕みたいな下っ端がこのくらいの傷で医療班の皆さんの手を煩わせるのが申し訳なくて…」
「そっかぁ…じゃあ私が手当てする。私にならいいでしょ?ただの見習いだし。」
「それは助かるよ。」
「このくらいの傷なら、私でも手当てできるから。」
何気なく、傷を確認するように
コビーの手を両手で触る。
「あ、あの…わかったよ。ありがとう…」
コビーは真っ赤になって下を向いた。
「ごめんっ…その…女の子に触られることに慣れてなくて……」
「あ、ごめん!」
耳まで真っ赤になるコビーに
私も自分の行動が急に恥ずかしくなり
慌てて手を離す。
「僕、そろそろ戻るよ。」
「あ、私も戻る時間だ。じゃあ、今度から怪我したら私のところに来てね!」
「そうさせてもらうよ。ありがとう。じゃあまた。」
「うん!」
笑顔で手を振る。
『女の子』って言われたことに私も少し意識してしまって、胸がドキドキする。
また会いたい。
自然とそう思っていた。