じゅじゅさんぽVol.11【メカ丸と三輪の願い】
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「領域展開」
だけど、この油断が。行けなかった。
「"自閉円頓裹"」
人間の腕が格子のように相手を囲む領域。
これが、真人の領域。
「はい、お終い」
心臓が大きく脈を打つ。
全身から汗が噴き出る。
決めたんだ。
皆に。
会うんだって!!
「"無為転変"」
だが。
そんな俺の意思とは反して。
メカ丸は音を立てて膝をついた。
「直接触われなくたって、領域に入れちゃえば関係ない。それはオマエも分かってただろ?ハロウィンまでざっと10日。俺が呪力をケチって領域まで使わないと思ったか?10日も休めば全快するよ。作戦遺夢と希望を詰め込むなよ。気の毒すぎて表情に困るんだよね」
そう言って真人は俺に背を向けた。
馬鹿め。
その油断が命取りなんだよ。
見下すのもいい加減にしろよ。
ガラ空きの背中に、カプセルをぶち込んだ。
「は?」
このカプセルには
俺ではこのやり方でしか術を成立させられなかった。
ストックは4本。
1本目は失敗。
2本目は奴の領域から操縦席を守るために使った。
そして今、3本目……。
それは平安時代。
蘆屋詐貞綱によって考案された。
呪術全盛の時代。
凶悪巧者な呪詛師や呪霊から、門弟を守るために編み出された技。
一門相伝。
その技術を故意に門外へ伝えることは縛りで禁じられている。
それは。
"領域"から身を守るための、弱者の"領域"。
「シン・陰流"簡易領域"」
それを俺はカプセルに入れた。
俺はシン・陰流の門弟ではない。
だけど、視てきた。
全てを。
この術を使う、彼女の姿をずっとずっと視てきた。
"領域"はあらゆる術式を中和する。
領域内では五条悟にですら攻撃は当たるんだ。
簡易とはいえ、
現に今、真人の領域は破壊された。
「高みの見物もここまでだな、夏油!!」
嬉しさのあまり叫んでしまった。
それに、簡易領域が1本残っているし、呪力9年分を残して夏油と闘れる!!
嬉しい誤算だ。
ポケットの中には焦げたキーホルダーがしまってある。
三輪と真依と西宮の三人が遊びに行った時に、偶然見つけたキーホルダーのガチャガチャ。
そのキーホルダーはアニメのロボットのもの。
かつての俺が熱狂し、夢を見たアニメの中の偶像のヒーロー。
とある任務で焦がしてしまったが、3人から貰った大事な物。
ずっとずっとポケットにしまっていた。
会いたい。
皆に。
会いたい。
「再会」を誓うメカ丸の想い。
五体満足で、生身で、「初めて」会いに行きたい、俺の願い。
「撃て!!メカ丸!!」
勝って。
皆に。
会うんだ!!
そう。
願っていたのに。
気付けばメカ丸の装甲は、真人によって破られていた。
不気味に笑う真人の顔が嫌に脳裏に焼き付く。
仕留めそこなった。
だがまだ領域は1本残っている。
直にぶち込んで……。
目の前に真人の掌が見えて。
自分の肉体が、音を立てるのをこの耳で聞いた。
今更ながら。
引け目を感じてしまった。
任務から帰ってくれば「お帰り」と声を掛けてくれる。
それに対して「ただいま」と返す。
そんな当たり前のことに。普通のことに。
暖かさを、居心地の良さを、嬉しさを覚えた。
もし、もし俺が、この姿で、「はじめまして」と言えたなら。
彼等はどんな言葉を返すだろう。
どんな反応をしてくれるだろう。
今までしてきた俺の行いを知った時、彼らは、彼女は、一体どんな顔をするのだろう。
どんな言葉でも、どんな表情でも、どうでもよかった。
ただ一言でいい、一目だけでいい。
自分の瞳で、彼らを見つめていたい。
もうすぐ、会いに―――。
遠のく意識の中。
ポケットからあのキーホルダーが静かに転げ落ちて、血だまりの中に沈んでいくのが見えた。
最期に、浮かぶ情景は―――……。
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