じゅじゅさんぽVol.10【致死量の傷】
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段ボールから箪笥へとしまわれる下着たち。
可愛い下着はいつでも使える様に手前へ、エロい下着は使わないだろうから奥へ。
そんな風にしまいながら感じた感想。
なんでサイズを知ってんだよ。
どこで調べてきた。
怖い、お兄ちゃんが怖い。
別の意味で真面目に嫌いになりそう。
げんなりとしながら最後の下着をしまおうと段ボールに手を入れたら、何かが手に当たった。
視線を向けると私の手に当たったのは銀行の通帳だった。
二人から預かった物じゃない。
私の名義で記されているそれを取って中を開いた。
『…………は?』
記されている金額に言葉を失う。
一千万????
0が一個多くないか?
目ん玉飛び出るかと思った。
もしかしてさっきの1107って暗証番号?
私の誕生日にもお兄ちゃんの誕生日にも掠ってもいないんだけど。
でも、誕生日しない方がいいってよく聞くし、そう言う事なんだろうか。
一回りも下の妹の誕生日に下着送って、多額の貯金通帳を送ってくるような気持ち悪いお兄ちゃんがでたらめな数字を暗証番号にするはずがない。
だって普通過ぎるもん。
逆にきっしょい。
何かのごろ合わせなんだろうか。
そう思った瞬間、この数字のゴロが分かってしまって思わず笑ってしまった。
『あはははははは!!まじか!!まじかよ!!!きっしょっ!!!!お兄ちゃん気持ち悪いわ!!!』
お腹を抱えてゲラゲラと笑った。
こんなの笑ったのは久しぶりで、すぐにお腹が痛くなって口の端も痛くなって、涙がたくさん零れた。
ボロボロと零れる涙が頬を濡らして床に水たまりを作る。
『……お兄ちゃんの、ばか』
私の誕生日をお兄ちゃんは覚えててくれた。
一日遅れたけど、本当は昨日届くはずだったのかもしれない。
私が一人でこの家に暮らしていると分かったからこの通帳を送ってきたんだ。
私がちゃんと暮らせるように、生活に困らないようにするために。
お兄ちゃんのことは嫌い。
お兄ちゃんが犯罪者でなければ、私はこんな目に遭わなくて済んだんだから。
お兄ちゃんのことが大好き。
ちゃんと私のことを覚えててくれた、私のことを想ってくれていた。
そう。
大好きなんだよ。
大嫌いだけど、大好きで大好きで仕方が無いんだ。
本当に嫌いになれるはずがないだろ。
【全部終わったら、必ず戻ってくるよ】
【その間、辛い思いさせるけど我慢だよ】
幼い頃、お兄ちゃんが言っていた言葉を今さらになって思い出す。
全部終わったらって、お兄ちゃんは何かをしようとしているの?
辛い思いさせるけど我慢だよって、あとどのくらい我慢すればいいの?
いいよ、分かった。
待ってるよ、お兄ちゃんのこと。
今までずっとずっと我慢してきたけど、もう少し我慢するよ。
お兄ちゃんと暮らせるなら。
本当に嫌いになれるはずがないんだよ。
家族だとか血の繋がりがあるだとか、そんなんじゃない。
私はちゃんとお兄ちゃんから愛を貰っていた。
お兄ちゃんのことを愛しているから、そう簡単に切り離せるわけがないんだ。
苦しくて悲しくて辛いのは、私がまだお兄ちゃんと繋がっていたいと願う証拠だから。
帰ってきたら覚えてろ。
今まで我慢してきた分、殴り倒してやる。
そんでたくさん甘えてやる。
そしたら、昔みたいに私を抱きしめて名前を呼んで。
『お兄ちゃん、大好きだよ』
少しだけ開いていた窓から差し込む春の日差しと時折吹く温かく優しい風が私の身体を包んだ。