じゅじゅさんぽVol.10【致死量の傷】
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『夏油さんに近づかない方がいいよ。いつ殺されるかわかんないから』
『友達のふりして、本当は殺す計画とか立ててたかもしれないしね』
『こわっ……』
『あの人のせいで学校の評判落ちるじゃん……。高校受験とかに響いたらすごい迷惑』
『つうか、逆に殺意湧いてきた。普通に死んでくんないかな』
『わかる。そっちの方が私達のためになるよね』
毎日聞こえてくる女子たちの悪口。
『なぁなぁ。俺さ、最近嫌なことばっかりだからさ、オマエの兄ちゃんに頼んで俺のこと殺してくんね?』
『ばあか。マジで殺されたら洒落になんねえべ』
『冗談に決まってんだろぉ。でも興味あんじゃん。人殺す感覚っていうか、死ぬ感覚みたいなものって。あ、なんなら夏油が俺の事殺してくれてもいいんだぜ。ほら、よく言うだろ。蛙の子は蛙って』
『おい、いい加減にしろよ。あんま気にしないでよ、夏油さん。こいつ頭イカレてるから』
『イカレてんのはコイツの兄貴だろ。自分の両親殺しておいてのうのうと生きてんだろ?犯罪者はみんな死ねばいいんだよ。それが世の為ってもんじゃね?なぁ、オマエもそう思うだろ夏油』
毎日侮辱してくる男子たちの会話。
最初こそ我慢をしていた。
そう言われるのは仕方がないことだと自分に言い聞かせて。
だって、彼らの言う通りだから。
お兄ちゃんは犯罪者で、私はその妹だから。
でも。
でもでも。
私だって好きでお兄ちゃんの妹になったわけじゃない。
できることなら皆みたいに普通に笑ってお話したい。
募っていくどす黒い感情をどこかに捨てたくて、この頃から私は呪霊狩りを始める様になった。
人間の負の感情から生まれるこいつらを祓えば、自分の気持も晴れた。
そいつらの抱く気持ちごとそいつらを殺しているような感じがしてすっきりした。
蛙の子は蛙。
間違いない。
オマエらの知らないところで私はオマエらを殺しているからな。
そんなある日。
私の家に荷物が届いた。
中学2年の春の日だった。
もしかしてお父さんとお母さんが何かを送ってくれたんだろうかと思って、段ボールを開けて中身を確認した。
そして息を呑んでしまった。
そこにはぎっしりと女性用下着、ランジェリーが詰め込められていた。
実用性のあるものからなんかちょっと透けててエロいやつもあった。
え、これはなに?
お父さんとお母さんがこんなもの送ってくるなんて。
軽くドン引きしていたら、箱の底に一枚の紙が入っているのに気が付いた。
手紙、というよりもノートの切れ端を破いたようなもので、まあ簡単に言えばメモだ。
そこには「誕生日おめでとう。Sより」と書いてあった。
誕生日?
誕生日って誰の?
ふとカレンダーを見ると今日は4月14日。
そこで気付いた。
昨日……4月13日は私の誕生日だ。
え、じゃあこの下着は誕プレってこと?
は?
まって、本当に申し上げにくいけど、ちょっと気持ち悪いぞ。
誰だよ、Sって。
お父さんとお母さんではないことは確かだ。
どうしよう、ストーカーのSとかだったら警察に連絡しなくちゃ。
冷汗がたっぷりと全身に回った頃。
ふと、一人の名前が私の頭の中に浮かんだ。
『お、にい……ちゃん?』
いや、まさかそんなわけ。
私がこの家に住んでいることをどこで知ったんだよ。
それこそ本物のストーカーじゃないか。
普通にきっしょい。
え、お兄ちゃんってこんな人だったの?
情報処理が追い付かなくて固まっている私だったが、目の端に何か数字が書いてあるのに気が付いた。
誕生日おめでとう、と書かれた文字の下。
本当に小さい数字が4つ並んでいる。
1107
なんだ、この数字は。
いくら考えても分からない。
お兄ちゃんの考えていることが何一つとして理解できなくて、眉間に皺が寄った。
いいや、ここで考えても埒があかん。
とりあえずこの下着たちを箪笥にしまうか。
捨てるのはもったいない。
着るか着ないかは私次第になるが。