じゅじゅさんぽVol.10【致死量の傷】
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小学校でも居場所はなくなってしまった。
その子が学校中に言いふらしたから。
『あいつ、人殺しの家で育ったんだぜ』
『うそぉ……』
『本当だって。だってアイツの本当のパパとママ、兄貴に殺されたんだもん』
『ええっ……。めっちゃ怖いじゃん』
『俺達もいつ殺されるか分かんないから、もう近づかないほうがいいよ』
『そうだな』
みんなみんな。
わたしのそばからはなれていった。
いっしょにあそびたかったのに。
いっしょにわらっておはなししたかったのに。
だれもわたしとおはなししてくれない。
家庭だって崩壊した。
父親と母親は毎日のように喧嘩をして。
その原因は案の定、この私で。
『オマエがこの家にきたから!!パパとママが毎日喧嘩してるんだ!!!』
『…………ごめん、なさい』
『消えろよ!!この家から出て行け!!オマエなんか、オマエなんか……、死ねばいいんだ!!!!』
泣いているあの子の涙が。
泣いているあの子の声が。
泣いているあの子の顔が。
目に、耳に、頭に。
こびりついて離れない。
言葉の針が刺さって。
悲しくて辛くて苦しくて怖くて寂しくて。
気付いたら私は家を飛び出して走り出していた。
帰りたかった。
あの家に。
パパとママとお兄ちゃんが待っているあの家に。
でも、誰も待っていないから。
誰もいないから。
悲しくて辛くて苦しくて怖くて寂しくて。
『パパ……!!ママ……!!おにぃ……お兄ちゃんっ……!!』
余計に虚しさを膨らませると分かっていても。
もういない人だと分かっていても。
名前を呼ばずにはいられなかった。
帰りたい、あの家に。
誰も待っていなくてもいい。
ただ、温かったあの家に戻りたかった。
でも、帰れるはずもなく。
私は途中で力尽きて地面に倒れてしまった。
通りかかった近所のおじさんが警察に連絡をしてくれたけど、この一件で私は父親から暴力を受ける様になってしまった。
『オマエの勝手な行動で私達がなんて言われているのか分かっているのか!!』
殴られて蹴られて。
『オマエみたいな人間を引き取ってやったんだ!!感謝をぐらいできないのか!!』
寒空の下、何時間も立たされて。
母親とその子供は見て見ぬふり。
叫んでも謝っても意味はなかった。
言葉に力はないと知った。
呪霊が見えて祓う力を持っていても、そんなの一般社会では意味がないとわかった。
どんどん心が荒んでいくのが分かった。
心が死んでいくのが分かった。
何も文句を言わなければそれ以上の事をされないと分かってからは、ずっと我慢し続けた。
我慢して我慢して。
我慢し続けた結果。
私は再び施設に預けられた。
ああ、ついに私を手放したんだ。
あんだけのことをやっといて。
小学校5年生になったばかりの出来事。
私ばかりが苦しい思いをしている。
私ばかりが。
黒い感情が私の心を支配していく。
お兄ちゃんのせいだ。
お兄ちゃんのせいでこんな目に遭っているんだ。
お兄ちゃんがお父さんとお母さんを殺さなきゃこんな目には。
お兄ちゃんがお兄ちゃんのお兄ちゃんのせいお兄ちゃんが悪いお兄ちゃんのせいでこんなお兄ちゃんなんかお兄ちゃんなんか。
『お兄ちゃんなんか……大嫌いだ』
小さく零した言葉に、何も言えなかった。
そうだ。
私はお兄ちゃんを恨んでいた。
恨むことで、そうすることで楽になりたかった。
嫌いだと言ってしまえばすごく心が軽くなっていったから。
ずっと憎んでいたし恨んでいたし嫌いだった。
大っ嫌いだったんだよ、本当は。
お兄ちゃんのこと―――……。