じゅじゅさんぽVol.2【欲しかったもの】
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【じゅじゅさんぽ】Vol.2
時は私が呪術高専に入学したばかりの頃まで戻る。
本当は白百合に行きたかったけど、監視下にいるためにそれは許されない。
入学して一日が経ったこの日。
私は五条悟に連れられて、学長である夜蛾のもとへとやってきた。
私の目に映るは可愛いぬいぐるみをぬいぬいしているごつい顔したおっさんの姿。
情報処理が追い付かないけど、これ呪骸か?
「呪術高専になにしにきた?」
そんなことを考えていると、夜蛾が口を開いた。
なにしにきた、だと。
それはこっちが聞きたい。
「何も。白百合に行きたかったけど、監視下に置くために呪術高専に来させられた」
「お前は呪術師としてその先に何を求めているんだ」
「何も。私は何も求めてない。強いていうなら五条悟を殺したい」
本心だ。
これで入学取り消しになったとしてもよかった。
どうせどこにも私の行く場所なんてないし。
だったら、本当の心を話してしまおう。
そう思った。
夜蛾は深いため息を吐いた。
たぶんこいつが聞きたいのはこういう事ではない。
解っていながらも私は夜蛾に口を聞いた。
「お兄ちゃんのしたことは間違ってるってわかってる。そのせいでいろんな人が犠牲になったし、私の両親も死んだ。私も後ろ指刺される生活を送ってきた」
「………」
「それでも私はお兄ちゃんを嫌いになれない。お兄ちゃんは唯一の家族だし。だから私はお兄ちゃんを殺した五条悟を許せない。殺したいほど憎い。夜蛾、オマエもだ。担任だったくせに、お兄ちゃんの異変に気付かなかった。それがお兄ちゃんの心を殺した。お兄ちゃんは一人で苦しんだ。だから私はお前らを許さないし、私も私を許さない」
きっとお兄ちゃんは私も殺す気でいたと思う。
でも両親と違って私は呪力があって、術式が使えた。
だからお兄ちゃんは私を生かした。
私が私を許せないのは。
幼くて無力な自分に対して。
もっと早く生まれてきていれば、お兄ちゃんの側にいられれば、こんなことにならなかったのではないかと思ってしまう。
「私が呪術師になるのは、お前らを、五条悟を殺すためだ。そして私も死ぬ。私みたいな復讐にまみれた人間をもう二度と生み出さないために。だから私は呪術師になる。それだけだ」
「………いいだろう」
夜蛾は少しだけ眉を寄せたあと、そう言った。
合格ってことでいいのだろうか。
踵を返して、寮に戻ろうとする私の背中に夜蛾の声がかかった。
「お前が進む道は茨の道だぞ」
「知ってる、そんくらい。だからなんだってんだ」
「兄が、傑が悲しむぞ」
「……身内の尻拭いをするのは身内だ。それに、もう後戻りなんてできねえだろうが」
「………お前は堕ちてくれるなよ」
「堕ちねえよ。私は私だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「…………」
「お前らこそ、私が闇落ちしないようにせいぜいちゃんと見張っとくんだな」
「ふっ、そういうところ少しばかり傑と似ているな」
「当たり前だろ、私は夏油傑の妹だぞ」
ニヤリと笑って私は今度こそ夜蛾の元から離れた。
外は真っ青な空が広がっている。
夜蛾に、声に乗せた私の想いは届いたのだろうか。
届いても届かなくてもどっちでもよかった。
私が声に出したことに意味があるのだから。
「馨」
「なんだよ」
名前を呼ばれて振り向くと、五条悟が笑みを浮かべて私に近づいてきた。
私を見下ろす男は、大きな手を私の頭に乗せた。
「早く僕を殺せるといいね」
「首洗って待ってろ。秒で殺しに行くわ」
私は口元を歪め、頭に乗っていた男の手を払いのけた。
そんなことを話していると、私の目に、2年生4人の姿が映った。
反射的に反対方向へと逃げる私。
乙骨憂太や狗巻棘、パンダはどうってことない。
ただ、禪院真希がいる。
あの女はダメだ。
また頭をかち割られる。
ちょっとばかしあれは私にとってトラウマだ。
「あ、おい!!」
逃げる私を禪院真希が呼ぶが、それすら無視してひたすら走った。
どんだけ私あの女が怖いんだ。
いや、普通に怖いわ。
同じ人間だけど、あの女は人間じゃない。
ゴリラだ。