じゅじゅさんぽVol.10【致死量の傷】
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――虎杖悠仁side――
馨が会場に入ってから暫く経った。
俺はホテルから少し離れた場所で馨の連絡をひたすら待つ。
何もできずにいることに苛立ちと腹立たしさを覚え、スマホを握る手に力が篭る。
耐えろ、今の俺にできることをやるだけだ、耐えろ。
そう自分に言い聞かせた時。
後ろから気配を感じ振り向くと、そこには数人の男が立っていた。
通行人、なんて気配じゃない。
この空気を俺はよく知っている。
中学時代によく他校の連中に喧嘩を吹っ掛けられ返り討ちにしてやったけど、今のこの空気はその時のものとよく似ている。
「オマエ、あの女の仲間だな」
あの女……って、まさか馨のことじゃねえよな。
いや、こうしてかまをかけてきてるってことは俺と馨の関係は100%バレてる。
が、下手な反応をすれば馨の身が危ない。
どう答えるべきか……。
こういうの俺、苦手なんだよ。
ここに伏黒がいればうまい躱しかたしてくれたんだろうけど。
そこまで俺頭回らんし。
「そうだけど」
下手な反応して馨を危険な目に遭わせるよりだったら、ここでこいつらを倒したほうが早い。
連絡されるまえにぶっ倒そう。
と、思ったらどうやら向こうも同じだったようで、俺にむかって拳を振り上げてきた。
それを避けて、俺はふぅ、と軽く息を吐く。
これはアレだよな、あっちが先に手を出してきたから俺も反撃していいよな。
なんだっけ、せーとーぼーえーってやつ?
指の骨を鳴らし、唇を舌先で舐める。
「あんたらがあの中で何をしてるか、調べさせてもらったよ」
「で?調べたからなんだってんだよ。クソガキが舐めた真似してんじゃねえぞ」
「いい思いをさせてやってんだ、むしろ感謝されるべきじゃね?それに、悪い事しようがさせようが、バレなきゃ何やってもわかんねえだろ。問題が起きない限り、警察は動かねえし」
「……難しい話は俺、よくわかんねえけどさ。被害者がいて悲しんでる人がいて、それで何をやってもいいだなんてそんなわけねえだろ」
脳裏に蘇るは、馨のこと。
あの時、真人との戦いが終わって、順平たちの死体を見て、馨が生きていることに安堵して、そして彼女に、キスをして自分の欲を無理矢理ぶつけた。
嫌がる彼女を押さえつけて、昂った欲望を触れさせて、冷静に慣れたのは「嫌いになりたくない」と放った彼女の言葉のおかげで。
それがなければきっと俺は馨を傷付けていた。
強くて弱くて、強がりで泣き虫で、素直じゃなくて、優しくて、俺の大好きな人を心から傷つけて泣かせていた。
好きな子だから、って言うのもあるんだろうけど。
でも、それでも。
バレなきゃいいとか、悪いことをしている自覚がありながら人を傷つけ続けるとか、そんなん許せるわけねえだろ。
たくさんの涙が流れて落ちて、それを笑って見てられるほど俺は落ちぶれてなんかいない。
それに、それを許してしまえば理解してしまえば。
あの時、俺の事を抱きしめて許してくれた馨を否定することになる。
それだけは、御免だ。
気付いたら俺は、男たちに向かって拳を振り上げていた。
◆◆◆
「ふぅ、」
地面に転がる男たちを見下ろし、額から零れる汗を拭った。
今は気絶しているから大丈夫だけど、いつ目が覚めて襲ってくるかわからないから、とりあえず服をはいでおこう。
そんでもって……。
「すいませーん、おまわりさーーーん!!!」
白チャリに乗ってパトロールをしている警官に声を掛け、酔っぱらった人たちに絡まれていたら、急に倒れてしまったと嘘をついた。
警官は「またか……」といったような表情をした後、トランシーバーで応援を呼んだ。
「じゃあ彼らはこっちで対応しておくね」
「おなしゃーす。じゃあ、俺も帰ります」
そそくさと現場から逃げて、俺はLINEを開く。
馨からの連絡はない。
だが、アイツらが俺を狙ってきたんだ。
馨も狙われている可能性は高く、連絡がないのもできない状況にあると考えた方がいい。
俺一人で乗り込んだとしても状況が変わる事はない。
だから、俺は助けを求めた。
現代における"最強の呪術師"に。