じゅじゅさんぽVol.10【致死量の傷】
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「君が馨ちゃん?楽しんでる?」
会場全体を見渡すために隅のほうにいたら、声を掛けられた。
見上げる形で首を少しだけ上の方へと向ければ、そこには先ほど壇上に立って挨拶をしていた杉野が笑顔を張り付けて私を見つめていた。
両脇には側近なのか、二人の男も従えている。
逃げ場をなくすためなのかなんなのか……。
とりあえず今は会話をしなければ。
「はい、楽しんでます。自分の知らない一面を知れた気がします」
「へぇ。例えば?」
「例えば、私は人間関係を築くのが下手だと思っていたんですけど、下手なのではなく苦手意識が先行してしまい身構えてしまって結果下手なんだと気づかされました。自分のことって意外と何も見えていないんだなって」
「今日でそれを知れたならよかった。今後どうしたらいいか対策ができるしね」
「そうですね」
この会場に入ってから他の人間と会話なんてしていない。
今の言葉は、高専に入ってから私自身が気付いたことだ。
いや、気付いたと言うよりは気づかされた。
虎杖や伏黒、野薔薇、禪院真希、狗巻棘、パンダ、乙骨憂太、そして五条悟。
こいつらのおかげで。
無意識に顔が綻んだ。
杉野は何を思ったのか、私の頭に手を置いてくしゃりと髪を撫でる。
「う"っ……‼」
そして、思い切り髪を鷲掴んできた。
あまりの痛さに顔を歪めると、耳元に杉野の声が飛び込んできた。
「オマエ、術師だな?」
「……!!」
「オマエらが俺らのことを調べていたように、俺らもオマエらの事を調べていたんだよ。外に仲間が待機してるよな?」
虎杖が外にいる事もお見通しかよ。
いつからバレていたんだ。
たった数日なのに、こんなに簡単に正体がバレたとなると、女性陣にも仲間がいたんだ。
細心の注意をして調査をしていたが、見られていたんだ。
くそ、失敗した。
だが、ここで虎杖の事を肯定するわけにはいかないし、既にバレているなら虎杖のところにもこいつらの仲間が行っている可能性が高い。
となると……。
「……何が目的だ」
「騒ぎを大きくしたくねえ。俺らに黙ってついて来い」
「嫌だ、つったら?」
「そうだな。その時はここに居る女ども全員殺す」
私の返答次第でここにいる女性たちが血を流すことになる。
それだけは避けたい。
この中にはこいつらに協力している人間もいるのは確かだ。
だが、無関係の人間も確かにいる。
その人たちを危険な目に、死なせるわけにはいかない。
「…………わかった」
「話の分かる奴でよかったよ」
纏わりつくような厭らしい笑みを浮かべ、杉野は私の腕を取り歩き出した。
その後ろを側近の2人が着いて歩いてくる。
逃げる気はさらさらないが、こいつらは私を逃がさない気でいる。
まあいいだろう。
こいつらが非術師だったらやり方を考えたが、その心配もない。
先ほど杉野は私のことを「術師だな」と聞いてきた。
一般人がそんなことを聞いてくるはずもない。
確定だな。
少なくとも杉野は呪術師だ。
厄介で面倒で悪質な方の、な。
他の2人が呪詛師かどうかは今の段階では判断できかねるが、ずっとお付きについているなら杉野の正体は何となく把握しているはずだ。
黙秘権と引き換えにいい思いをさせてもらっているか、呪詛師仲間か。
どちらかだろうな。