じゅじゅさんぽVol.10【致死量の傷】
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イベント当日。
結局昨日の聞き込みでは何の収穫もなかった。
これ以上変に動き回れば、サークルメンバーに疑いの目で見られてしまうと思い、早々に打ち切ったのもあるが。
前日のホテルでは虎杖と段取りを決めた。
何かあった場合、すぐに中に突入できるようにSOSのワードを決め、虎杖は会場近くで待機してもらうことに。
五条悟への連絡は全て虎杖が担う事となった。
「段取りは決めたが、うまくいくとは限らない。そこは臨機応変に対応してもらうことになるけど、オマエのことだから大丈夫だよな」
「応」
虎杖の性格をそのまま宿したような力強くまっすぐな嘘偽りのない瞳が私を見つめる。
この瞳が私は苦手で好きだった。
そして、当日。
私はイベント会場の前にいた。
周りには女の子しかいない。
派手なメイク、着飾った服装が、夜の街に溶け込み違和感などどこにもない。
逆に薄いメイク、普段着のようなラフな服装のほうが悪目立ちしている。
つまりこの私のことなんだけど。
仲のいい友人同士で固まっている女子たちはきゃっきゃっと今から始まるイベントに胸を躍らせ、その中に混じる
笑われ慣れているからいちいち気にはならない。
むしろもっと目立っていい。
杉野という男がどういう男なのか聞けなかったから、目立ってそいつの目に留まればすぐにでも接触できる。
そんなことを考えていると、会場の扉が開いた。
真っ黒いスーツ姿の男が5人中から出てきて、女性たちを中に招き入れる。
私は虎杖に中に入る事を伝え、スマホをポケットにしまった。
ホテルのパーティー会場を貸し切り、朝まで飲んで騒いで踊って歌うようだ。
成程、酒に酔ったとしても介抱という名目で部屋に連れ込める算段か。
しかも貸し切り。
宿泊客はいない。
うまいこと立ち回ってんじゃねえか。
女子の大群がぞろぞろと一つの部屋に向かって歩いていく。
不気味さを感じながら私も彼女たちの後ろをついて歩いた。
だだっ広いメインホールには、たくさんの料理とドリンクが並んでいた。
ドリンクは主にアルコールだ。
というか、ソフトドリンクなんて一つもありゃしない。
ウーロン茶とミネラルウォーターのペットボトルはあるが、きっと中身は酒に違いない。
『みなさん、本日はお集まりいただきありがとうございます!!イベントサークル代表の杉野です』
壇上に上がり、挨拶をする男は確かに「杉野」と言った。
整った顔立ち、屈託のない笑顔、優しく明るい雰囲気、落ち着いた髪色……。
第一印象は爽やかな青年、と言った所だろう。
だが、このサークルの目的を知っているとその笑顔も爽やかさも嘘くさく、軽蔑にも似た感情が湧き起こってくる。
『このイベントサークルの目的は、人脈を広げることにあります。仕事でもプライベートでも人との繋がりは大切です。困った時に自分を助けてくれたり、視野が広がったりとメリットしかありません。社会に出た時一番大切なのが人脈です。コミュニケーションです。このサークルはそれらを向上させるための場所。自分のために有意義に、この時間を、このサークルを、利用してください!』
大きな拍手が鳴り響いた。
まるで宗教だな。
それらしい理由を並べたところで、もうわかってんだよ。
何が困った時に助けてくれるだ、何が人脈だコミュニケーションだ。
このサークルを最大限に利用しているのは誰でもない、オマエらだ。
こんな風に、言葉巧みに女性たちを誘い出して自分たちの性欲を発散させて、女はオマエらの為の道具じゃない。
自分の中に生まれる黒い感情を抑えるために、深い息を長く吐いた。
ここで私が感情任せに動いてしまったら意味がない。
気持を落ち着かせ、ホール全体に目をやれば女性たちはグラスを片手に握っていた。
いや、女性たちだけじゃない。
サークルメンバーであろう男性たちもホールに入ってきて、グラスにお酒を注いでいる。
私もグラスを貰いに行かなくては。
何も持っていないと疑われるし。
つっても、男女合わせて200人くらいメインホールにいる訳だが、いくら広いホールでも流石に人が多すぎる。
人の波に流された結果。
ドリンクが置いてある場所から遠のいてしまった。
既に会場は盛り上がっておられる。
すげえな。
素直に感心してしまった。
やる事成すことがゲスでなければ、このサークルは普通にいいと思うんだけどな。
人脈を広げるのは悪いことじゃないし。
ただ付属品があまりにもクソなだけで。