じゅじゅさんぽVol.10【致死量の傷】
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「潜入?」
私は目の前の男が言った言葉を繰り返した。
目隠しをしたまま口角を上げる男は「そっ。君達にお願いしようと思って」と軽い口調でそう続けた。
話を聞く限り、今回の任務は呪霊の討伐ではなく"捜査"らしい。
何故それが術師側に回ってきたのか理解できず眉間に皺を寄せると、五条悟は資料を手渡してきた。
それに目を通し、納得してしまった。
「潜入捜査なのは理解できたけど、本当にそれだけでいいのか。もし、ここに書かれていることが事実だとしたら……」
「その時になったら僕が行くから安心していいよ。流石に未成年の君達には荷が重すぎるしね」
「そう思うなら最初からオマエが行けばいいんじゃねえのか」
「だめだめ。こんなGLGの僕が行ったら潜入どころの騒ぎじゃなくなるでしょ。だってほら、僕ってGLGだし」
「うっざ!!」
へらへらと笑う男の顔面に資料を投げつけるが、無下限のせいであたることはない。
それも相まって腹が立った。
「で。私と一緒にこれに当たる奴誰だよ」
五条悟は先ほどから"君達"と連呼していた。
が、この部屋には私と五条悟以外の人間はいない。
「悠仁だよ。もうすぐ来るんじゃないかな」
その言葉通り、廊下から誰かが猛ダッシュしてくる音が響いた。
ぶっ壊れるんじゃないかと錯覚するほど勢いよく扉は開かれ、その奥には息一つ乱していない男の姿が。
「ごめん先生、遅れた!!」
顔の前で両手を合わせる虎杖は私の姿を目に映すと「あ、一緒に行く奴って馨だったんだ」と白い歯を見せて笑った。
その姿はどう見ても飼い主を見つけて尻尾を振るゴールデンレトリバーにしか見えない。
今回の任務の詳細を虎杖はまだ知らされていないが、それは車の中で説明しよう。
虎杖がこの件に選ばれたのには何か理由があるからだろうし。
指定された場所へ行くために、私たちは待機させていた伊地知さんの車に乗り込んだ。
走り出す車の揺れに身をまかせながら、私はiPadを開いた。
そこに書かれている内容は先ほど五条悟から見せてもらった資料と何一つとして変わらない。
「虎杖、今回の任務について何か聞かされてるか?」
「いや、なにも。とりあえず緊急事態だから来いって五条先生に言われた」
「…………適当過ぎんだろ」
深いため息を吐いて、私はiPadを虎杖に見せる。
そして、簡単ではあるが任務の内容と私達がやるべきことを説明した。
とある大学に行きイベントサークルに潜入すること。
そのサークルで行われている活動内容を把握し連絡。
何も問題が無ければ撤収、事件性を感じたら無理に行動を取らず五条悟に連絡し撤収。
「それだけ?」
「それだけ」
「簡単すぎね?」
虎杖の言う通り、内容だけ聞けば簡単すぎるだろう。
だが、そう単純なものではないような気がする。
虎杖には言わなかったけど、被害者にあっている人間は全員"女性"で、4割の女性が精神的な傷を負い病院に通い、3割の女性が死亡している。
死因は全て自殺。
これだけ聞けば何もおかしい所はないが、彼女たちはあるサークルに関わっていた。
その結果がこれなら、そのサークルで何かがあったと思ってもおかしくない。
警察も動いているらしいが、私達に声が掛かったと言う事はそのサークルの中に呪詛師がいる可能性もあると言う事だろう。
そうなると警察の手には負えない案件なのは確かだ。
「そう言えば、五条先生が言ってた"アレ"ってさ、どういう意味なんだろうな」
「ああ、"本名は名乗るな、偽名を名乗れ"ってやつ?考えれば簡単な事だろ。私もオマエも呪術界ではそこそこ名前が知られてんだ。五条悟ほどではないにしろ。そのサークルにもし呪術界に関係する人間がいたら潜入もクソもなくなんだろ」
「呪術界に関係するって……呪詛師、とか?」
「もしいたらの話しな。だから偽名を使えって言ったんだろ」
虎杖は宿儺の器。
容姿は知られていなかったとしても名前くらいは聞いた事があるはずだ。
そして私は夏油傑の妹。
妹がいたと言う情報は私が五条悟を襲撃するまでは知られていなかった。
しかし今となっては呪術界で私の存在を知らない奴はいないだろう。
「俺、何にしようかな~」
隣では偽名という響きにワクワクした様子の虎杖がいる。
緊張感というものがこいつにはないのか、と思ってしまうが如何せん、虎杖のこういう陽気な部分に救われている自分がいるのも事実だ。
「山田でいいんじゃね?山田悠仁」
「え、普通過ぎてやだ」
「シンプルイズベストって言葉を知らねえのか」
車の中でぎゃあぎゃあ騒ぎながら、私達は目的地へと向かった。