じゅじゅさんぽVol.7【菜々子と美々子の願い】
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化け物たちは、髪の毛を燃やしただけじゃ飽き足らず、カッターを取り出して馨ちゃんの腕に宛がった。
白くて柔らかいあの肌に傷をつけようとしている。
夏油様の家族を、妹を、宝物を、傷つけようとしている。
気付いたら、私は教室の扉を思い切り殴っていた。
ドンッ!!
その音に気付いた化け物たちは一目散に教室を飛び出して走り去る。
自分たちが酷い事をしているって自覚があるから逃げるんだろ。
そうだよ、オマエらは人一人の心を殺したんだ。
心無い行動が、どれだけあの子の心を―――……。
シンと静まり返った教室。
馨ちゃんは、机から身体を起こして髪の毛に触れた。
焦げてしまい短くなった髪の毛に、ハッと息を呑む声が聞こえて、心が痛い。
唇をぎゅっと噛みしめた馨ちゃんは筆箱からハサミを取り出して毛先を切り始めた。
チョキ、チョキ、と聞こえてハサミの音と。
パラパラと、床に髪の毛が落ちる音。
そして馨ちゃんのすすり泣く声。
ただ見ていることしかできないことに無力さを感じて。
夏油様が理想とする世界を創りたい、そう思った。
そして夏油様とあの子と一緒に笑って、幸せに暮らしたい。
それが、私達の願い。
だから、オマエは違うんだよ!!!
夏油様の身体を乗っ取った、オマエは、夏油様の理想とする世界にはいらない。
真奈美や利久は夏油様の意思だって言って、アイツに協力するとか言い出して。
アイツが本物の夏油様じゃないことくらい分かっているくせに、なんで夏油様の意思だって言えるんだよ。
夏油様の肉体を取り戻すためだったらいくらでも協力はする。
でも、夏油様の意思は夏油様でしか創ることができない。
「五条悟が行動不能になり、世が混沌に堕ちれば割を喰うのは猿共だ。強者であることが生存の必要条件。猿は淘汰され術師は増え呪霊は消えていく。そうすればあの子だってもう傷つくことはない。それが夏油様が望んだ世界だ。だから協力する。肉他のことはこの際関知しない。それが、遺志を継ぐということだ」
ゴチャゴチャ話をややこしくするな。
あの子はずっと待ってた。
夏油様が迎えに来るのを。
迎えに来て一緒に笑って一緒に過ごすことを望んでいた。
猿共のいない世界を創ることもそうだけど、そこに夏油様がいなければ、あの子は幸せになれない、笑ってくれない。
死んでしまった肉体だとしても。
無理やりにでもあの子をこちら側へと引き連れようと思った。
理想の世界ではないけど、少なくとも独りぼっちじゃないし寂しい思いもしない。
アイツらみたいに傷つけたり泣かせるような真似はしない。
写真の中の少女みたいに太陽のような笑顔で笑わせてあげる。
そう、思ってた。
あの子は呪術師になってた。
嬉しそうに楽しそうに笑って買い物をする馨ちゃん。
中学生の時に見た寂しそうで悲しそうな雰囲気はどこにもなくて。
仲間に囲まれて眩しいほどまでの笑顔を咲かせる本来の彼女の姿がそこにあって。
この子の居場所はあそこなんだって本能的に理解した。
あの子はちゃんと笑ってる、幸せそうに。
夏油様が望んだ世界の中じゃないけど。
きっと夏油様はこの笑顔が見たかったんだと思う。
この笑顔のために、今まで頑張ってて……。
「夏油様の物語は終わったんだ。もう誰にも汚させない」
これ以上、夏油様を侮辱するような行為は許さない。
私達は夏油様を苦しみの中から解放してあげたい。
だから真奈美や利久とは決別し、美々子と一緒に宿儺の器を探した。
夏油様が本当に大好き。
大好きで大好きで大好きで。
夏油様の大好きなものは必然的に大好きになって。
五条悟は嫌いだけど。
宿儺の器を見つけて指を喰わせて、それででてきてくれたら……。
私達の願いは一つだけ。
夏油様を解放すること。
それだけ。
それだけだったんだ。