【加茂憲紀】もしも
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1月5日、日曜日。
時刻は朝の6時。
私、加茂憲紀は同じ京都校3年で付き合っている彼女、椎名馨と手を繋いで歩いていた。
お互いの熱で温かくなっている掌を感じながら、白い息を吐く。
向かっている場所は、高専から近い場所にある神社。
初詣だ。
本当は元旦に行きたかったのだが、馨が風邪を引いたためそれは叶わず、風邪が治った今こうして彼女と遅めの初詣に行っている。
地面には真っ白い雪が降り積もり、雪の道に足跡が4つ刻まれる。
雪の日の朝はとても静かで、景色は輝いて見える。
のは、きっと彼女と二人だからだろうか。
繋いだ左手の温もりを感じて、その手を少しだけ強く握った。
そして、少しだけ不安になった。
街はあまりに静か過ぎて。
世界にたった二人だけしかいないのではないかと、そんな馬鹿な事が頭の中をよぎった。
だから突拍子もない言葉が私の口から飛び出たのだろう。
「もし、明日死ぬとしたら君はどうする」
ありあえなくもない未来。
明日いきなり大きな地震が起きるかもしれない。
明日いきなり隕石が落ちてくるかもしれない。
明日いきなり特級が襲ってくるかもしれない。
明日いきなり何でもない任務でミスをするかもしれない。
そんな未来が、いつかは来る。
来ない、とは断言できないのが呪術師という生き物。
いつ死んでもおかしくはない。
それでも彼女には笑って生きていてほしいと思うのは、私が女々しいのだろうか。
そんな不安を抱く私の手を彼女は強く握る。
何でもないかのように淡々とした声が私の耳に届いた。
「いつも通り変わらない日常を過ごすと思う。朝起きて憲紀
と一緒に教室に行って、任務して、ご飯食べて、一緒に帰って、キスをして、最後の一瞬まで憲紀と一緒にいる」
静かな空間に、彼女の声は大きく響く。
「大丈夫だよ」と子供をあやす母親のような、そんな感じがした。
一度、「もしもの時」を考えてしまうとその思考は止まらない。
どんどん、「もしもの時」を考えてしまう。
だから私も意地悪くというか、馨に「もしもの時」を話す。
自分の中にある不安を彼女に受け止めてほしいのか、それともただ単に聞いてほしいだけなのか、よくわからない。
わからないけど、私はまた「もしもの時」の話を彼女にする。