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数年前、男は立ち続けることを諦めて苦しみの鎖から解き放たれた。
心地よい痛みが男の心中の痛みを和らげてくれた。
目の前には白い煙がたちこめ、気付くと男は階段を上っていた。
どこまでも続く階段をどこまでも上っていった。
不思議と疲れはなく、そして男はこの行動を理解していた。
そのうち階段にも終わりが見えだし、男の前に扉が現れた。
そう――――――その時。
「ちょーーーっとまったああああああああああああ!!!!」
男―――夏油傑の前に6人の男女が現れた。
それぞれ赤や黄色ピンクなどの服に身を包み、それぞれポーズをとっている。
「カラー戦隊レッド!!」
「カラー戦隊ブルー!!」
「カラー戦隊イエロー!!」
「カラー戦隊グリーン!!」
「カラー戦隊ピンク!!」
「土器色(かわらけいろ)!!」
それぞれがそれぞれの色を紹介し、そして再び決めポーズをとる。
「環境活動戦隊!!」
「「「「「エコレンジャー!!」」」」」
「なんなんだい、君達は」
明らかにおかしい色が一人含まれているが、彼らはそれを気にする事なく、夏油に指を差す。
「やぁ、そこのお兄さん」
と、赤色の服を着ている男―――灰原雄が言った。
「君が扉を開けようとしているんだね」
と、青色の服を着ている男―――加茂憲紀が言った。
「その扉を開けてはいけない」
と、緑色の服を着ている男―――伊地知潔高が言った。
「簡単に開けさせるわけにはいかないんだ」
と、黄色の服を着ている男―――与幸吉が言った。
「力づくでも行かせない!!」
と、ピンク色の服を着た女―――西宮桃が言った。
「ただで通れると思うな」
と、土器色の服を着た男―――東堂葵が言った。
「何がなんだか……。君達は一体なんなんだ?」
「俺達は!!環境活動戦隊!!」
「「「「「エコレンジャー!!」」」」」
赤、青、黄色、緑、ピンクがポーズをとる中、一人だけ、土器色の服を着た男はおろおろと戸惑いを見せていた。
しかしそれでもやはり彼らは気にすることなく、夏油に語り掛ける。
自分たちは、地球環境を守るために世界各地から集められたヒーローなのだと。
大気汚染や地球温暖化防止のために移動は極力自転車か徒歩、そしてご飯は残さず食べゴミはしっかり分別しているレッド。
水は出しっぱなしにせずこまめに止め、トイレで水を流す時は「大小」をきちんと意識しているというブルー。
森林を守るために森の木を伐って、苗木を植えて育てていく活動をしてるグリーン。
地球温暖化防止のため、節電をしているイエロー。
買い物をするときは必ずマイバックを持ち、レジ袋のゴミを出さないように心掛けているピンク。
そして、使った物は元の場所に戻し肥満にならないように適度な運動を心掛けている土器色。
それぞれが一人一人できるエコを実施していると言うのだが。
「ちょっと待ってくれないか」
青い服を着た加茂が手を挙げた。
「何かがおかしいぞ」
その言葉に、彼らは顔を見合わせる。
「……確かにおかしい」
と、幸吉が言った。
「何がおかしいのか話してくれるかな、ブルー」
「レッド、俺達は5人戦隊のはずだ。なのに、ここには……6人いる」
戦慄が彼らに降り注いだ。
驚きのあまり尻餅をつくイエロー、恐怖で体が震えるピンク、目を大きく見開き口を抑えるレッドに、グリーンもブルーも静かに頷いた。
「「この中に仲間外れがいる……」」
「うそ、だろ……」
小さく土器色がそう、零した。
「オマエじゃないかな」
冷静なツッコミを入れる夏油だったが、彼らの耳には届いていない。
そしてそこから醜い仲間外れを誰だ捜しが始まった。
レッドが必ずしもリーダーとは限らないからレッドが怪しい。
紅一点であるピンクが怪しい女一人だけだから。
そうやって男女差別をするイエローが怪しい。
カレー色ってだけで怪しいもんな。
一人だけ眼鏡かけてるグリーンが怪しいだろ。
明治時代みたいな服装しているブルーも怪しいだろう。
そう言った醜いいい争いが繰り広げている中。
土器色が手を挙げた。
「俺じゃないかな?」
「なぜそう思う、土器色」
「いや、もう土器色ってのがおかしいだろ。普通に考えて」
「普通?普通とはなんだ」
ブルーが土器色に詰め寄る。
いきなり詰め寄られたことと哲学的な質問をされたことで土器色は若干戸惑いの色を見せていた。
冷たくなる空気に耐えられないのか、夏油はそのやり取りを俯きながら聞いている。
「そんなに自分を責めなくていいよ、土器色」
「レッドの言う通りだ。ヒーローが5人でなければいけないなんて一体誰が決めた」
柔らかい笑顔を向けるレッドと誇らしげな表情をするイエローの言葉に、ブルーやグリーン、ピンクは大きく頷いた。
「よし!!6人のニューヒーローが生まれたことを祝して今から焼肉にでも行こう!!俺の奢りだ!!」
土器色の提案にみんな飛び跳ねる。
そして肩を組んで歩き出した。
少しずつ遠くなる6人の姿を見送る夏油は、自分が何を見せられていたのかを一生懸命に考えていた。