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「大丈夫ですか」
その時。
五条の耳に声が届いた。
慌てて振り向くとそこはいつの間にあの大広間へと変わっていた。
声をかけてくれたのは、ピンク頭の男だった。
「ひどい汗……。それに涙も……。先生を呼んできましょうか?」
「いえ、大丈夫です」
額から流れる汗と瞳から零れる涙を拭って、男は深く息を吐いた。
「無理しない方がいいですよ」
と、ピンク頭の男性。
「随分と興奮していたみたいですね」
と、ポニーテールの女性。
彼女が言葉を発するのは珍しく、3人は彼女を見た。
白い髪の男だけが深々と頭を下げ、「すみませんでした」と謝った。
「2050年。プログレスサイエンス。50年後ですね」
「その頃には私達、おじいさんおばあさんになっちゃってますね」
「……ドラえもんに、会えるでしょうか」
ぽつりと呟いた白髪の男の言葉に。
4人は首を傾げた。
そして自分の発言に自分でも驚いた男は「なんでもないです」と言い、「そろそろ部屋に戻りましょうか」と提案した。
大広間の扉の向こう。
廊下では硝子が、白衣のポケットに手を突っ込み中の様子を窺っていた。
「彼らはまた扉に近づきつつあるみたいだね。今回もやっぱりリーダー格の彼、白髪の男が最初に気づき始めているみたいだ。他の4人はまだのようだね。もうしばらく待ってもらえるかな」
「家入さん、釘崎野薔薇の報告書をまとめました」
その時、後ろから声がした。
振り向くけばそこには特徴的な前髪をした女性がカルテを手にしていた。
「ありがとう。今回は"幸せになりたい"だったかな」
「はい」
「だいぶ回復してきたみたいだね」
そう言ってカルテを女性に返す。
軽く頭を下げた女性はパタパタと音を立てながらその場を後にし、家入は再び視線を大広間に戻した。
「私は"通過"しました」
と、ピンク頭の男性。
「私は""遮断"されました」
と、オレンジ頭の女性。
「私は……。いえ。私の話しはいいです」
と、ポニーテールの女性。
「私は"限界"を見つけました」
と、白髪の男性。
「私は……。私、実は……一度死んだことがあります」
と、お団子頭の男性。
4人は男性を一斉に見つめた。
何かを考える様に俯く男性。
家入はその様子を見ながら、煙草に火をつけた。
「こういう物語がある。彼は立ち続けていた。しかし軈て彼は立ち続けることを諦めて、ある時ついに座った。それだけの物語。もし君がこの物語にタイトルをつけるとしたら、どんなタイトルをつける?……"Chair"?はは、なかなかいいタイトルじゃないか。……彼は確かに存在していた。しかし彼は生きてはいなかった」