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パチン、と指を鳴らす音が聞こえたと同時に。
真っ白い部屋はまた姿を変えた。
そこは学校の屋上。
学ランを着ているところを見れば中学生か高校生か、いや、背丈を考えれば高校生と言ったところか。
5人の男が屋上で変なポーズをとっている。
そもそも高校の屋上がなぜ解放されているのか、まずはそこの謎から解き明かそう。
答えは簡単である。
虎杖悠仁とその親友と自称する東堂葵、この二人の仕業であった。二人で屋上のドアを閉めていた鍵をぶち壊した。
結果、屋上は解放されたのである。
そして今。
5人の男は各々が得意とするポーズを決め、そして左端にいた男から順々に口を開いていく。
「エントリーナンバー1番!東堂葵!!」
と、仰向けに地面に寝転がり胸を抱きしめ腰を捻る。
さながらグラビアアイドルがするようなそのポーズにキメ顔&どや顔で、自分の名前を叫ぶ。
「エントリーナンバー2番!五条悟!!」
と、かけていたサングラスをまるでファンサービスをするかのように宙へ放り投げた後、顎に両手を寄せた。
瞳からは「きゅるるんっ」と音が発しそうな程、ウルウルとしている。
簡単にいえば、ぶりっこポーズである。
「エントリ―ナンバー3番!夏油傑!!」
と、ジョジョの奇妙な冒険のキャラクターであるジョナサン・ジョースターばりの立ち方をして、ウィンクを飛ばす。
笑った時に覗いた白い歯が、太陽の光に当たって煌めいた気がしたが、それは幻覚である。
「エントリーナンバー4番!虎杖悠仁!!」
と、こちらもまたジョジョの奇妙な冒険のキャラクターの一人、キラークイーンの立ち方をしている。
ダイナミックかつ躍動感溢れるこのポージングをしているというのに、その表情はまるで夏に咲くひまわりのごとく眩しい。
「エントリーナンバー5番。伏黒恵」
と、他の4人よりも声のでかさも無ければポージングもまたつまらない。
ヤンキー座りをしているだけである。
全員が自分の名前を言い終わった後。
少しの間が出来上がった。
そして、五条が口を開く。
「俺が一番かっこいいな」
五条の言葉に4人はポーズしたまま。
「何言っているんだ、私が一番かっこいいだろう」
「いいや、ブラザーが一番かっこいい」
「東堂わかってんじゃん、東堂」
「恵が一番つまんないね」
「……つまんなくねえよ。なんであんたらそんなノリノリなんだよ」
と、伏黒の言葉に4人は顔を見合わせて肩を竦める。
馬鹿にされたような気分になった伏黒のこめかみには若干青筋が浮かんでいるようにも見えた。
「もうやめないか、この遊び」
夏油のその一言で、みんなポーズを解いた。
「なんでだよ、盛り上がんじゃん。ジャニーズごっこ」
「これのどこがジャニーズなんだよ。ゲテモノグループだろ」
虎杖の言葉に伏黒はまた盛大なため息を吐いた。
胃が痛い思いをするのは、自分以外の人間がまともではないからかもしれない。
そう思った。
「でも、確かにこの遊びは飽きてしまったね」
と、夏油は大きく伸びをした。
心地のいい気温と太陽の温かさに、地面に寝転がる5人の目は少しだけ眠そうだ。
このまま午後の授業をサボって寝てしまおうか、なんて思っていた矢先。
「あっ!!」と大きな声を出した五条に、4人の視線が集中する。
「今からみんなでじゃんけんして、勝った一人がオナクラ行くってのはどう?」
「……何を言っているんだい、悟」
余りの突然の発言に、呆れた声しか出せない。
しかし当の本人は意気揚々と語る。
「だぁかぁらぁ。負けた奴は1000円ずつ払って勝ったやつはそれを握りしめてオナクラに行くんだよ」
「そういうことを聞いているんじゃないんだよ、私たちは」
「4000円で行けるものなのか?」
「そもそも未成年は入れないんじゃないのか?」
「……そう言う問題じゃないでしょう」
虎杖と東堂の的の外れた物言いに伏黒はマリアナ海溝並みの深い、本当に深いため息を吐いた。
まだ常識人である夏油に視線を向けると、夏油は声では咎めながらも顔はどこか期待に満ちているようなそんな表情だった。
常識人が常識を失くした瞬間に、勝負はもうついている。
五条は夏油のそんな表情を見て、地面に落ちたサングラスを拾ってかっこつけるようにスチャッとかけた。
「今から、俺の考えた企画プランをプレゼンする。お前ら、よく聞けよ」
伏黒を覗いた3人は、五条の前に正座をしてそのプランを聞こうと耳を大きくした。
五条は言った。
一人1000円ずつだして、じゃんけんに勝った者はそれを握りしめ風俗に行く。
そして、そのプレイ内容を教える。
たったこれだけ。
「成程。負けても1000円でエッチしていることが聞けるわけだ」
と、頭の悪い発言をする虎杖に五条は指をぱちんと鳴らして笑った。
「どうよ、この作戦」
「「「乗った!!」」」
夏油、東堂、虎杖の三人は敬礼のポーズをして五条に従順した。
しかし、一人だけ。
たった一人だけ背を向ける男がいた。
伏黒である。
「どうした、伏黒。生々しい話が聞けるんだぞ」
「いや、それはあまりにもクズいでしょう。それに俺達未成年ですよ」
「でも興味はあるだろう」
「……いや、別に」
東堂の言葉に、伏黒は視線を反らした。
瞬間。
4人の頭の中の電球がピコーンと光った。
考えていることはきっと皆同じ。
4人は口を片方の手で押さえ、もう片方の手でゆっくりと伏黒を指さした。
「「「「童貞君だ……」」」」
「ぶっ殺すぞ、お前ら……!!」
若干頬を染め上げながらも伏黒のこめかみには青筋が立っている。そんな彼を置き去りにして、4人は財布から1000円ずつ取り出し伏黒の手に札を握らせた。
「行って来いよ、恵。ちゃんと卒業するんだぞ」
「今回ばかりは仕方ねえよ。俺、待ってるからな」
「つまらんプレイだけはしてくれるなよ、伏黒」
「初めてだから緊張すると思うけど気楽に、ね」
五条、虎杖、東堂、夏油の余計な一言が伏黒のイライラを増長させる。
どうしたらこの4人をぶっ飛ばせるか考えている伏黒の耳に、とんでもない発言が飛び込んできた。
「でも、恵は童貞なんでしょ。そうしたら企画を変えなきゃね」
「企画を変える?」
「童貞君を卒業するなら、やっぱりソープでしょ」
夏油の発言に伏黒は更に行き場のない怒りを己の内に溜め込み、他の男どもは顔を真っ赤にさせていた。
「トルコ、か……」
「いつの時代だよ、それ」
東堂のボケに虎杖の的確なツッコミが炸裂し、視線は五条へと向けられる。
この企画の発端は五条だ。
男の返答次第で、今後の企画の行く末が決まる。
腕を組んで空を仰ぐ五条は、右手をサングラスのブリッジに持って行き、ゆっくりと外した。
もったいぶった動きに、3人の動悸は少しばかり早い。
青い空と同じ色をしたその二つの目は、4人を姿を映し、薄い唇は弧を描く。
「面白そうだ」
総隊長である五条の人一言に、3人はきゃっきゃっと笑いながら飛び跳ねて喜んでいる。
が、やはり問題は伏黒であった。
「俺は嫌だ。初めてがそんなところだなんて。俺はちゃんとしたところで好きな奴と普通にしたい」
「つまらん。実につまらん男だな、伏黒恵。童貞を大事に持っていてもいい事なんて一つもないぞ」
「それにはじめてで緊張してしまって、勃たないってなったら女性に失礼だよ」
さも、自分たちは経験者ですみたいな雰囲気を出す彼らにとうとう伏黒がキレた。
「俺だけじゃないでしょうよ、童貞は。あんたらだって童貞でしょうが」
「それは違うぞ、伏黒」
「そうだよ、恵」
と、東堂と夏油が伏黒に詰め寄った。
だが、五条と虎杖だけは伏黒に背を向けた。
それにいち早く気付いたのは、夏油である。
「あれ、悟と悠仁、どうしたんだい?」
「ん?いや、別にぃ」
「何ていうかぁ、傑さんも東堂も、早いんだなぁって」
「「ねぇー」」
顔を見合わせる二人のその様子に3人はピンときた。
この二人も童貞である、と。
自分の事を棚に上げてよく人の事が言えたな、と思う伏黒ではあったがこれでいじられるのは自分だけではないという安心感も生まれた。
夏油はニヤニヤしながら五条の肩に腕を回す。
それを払いのけながらも、親友の夏油が自分よりも早く卒業していることに少しばかり、いやかなりショックを受けた。
自分の方が絶対先だと思っていたばかりに。
顔面偏差値はハーバード大学並みの五条だが、性格偏差値は35以下を下回るGランクなために、彼女ができたとしても長続きはしなかった。
それに比べ夏油は顔もよければ中身もよかった。
と言うよりは猫を被るのがうまいため、モテ度は遥かに五条より上であった。
本性はあまり五条と変わらないが。
だからこそ五条はショックだった。そして気になった。親友の下事情が。
「傑」
「なんだい」
「後で詳しく聞かせて」
そんなやり取りをしながら、彼らはじゃんけんをして誰がソープに行くか決めようとしていた。
その時。勢いよく屋上の扉が開き、現れた生活指導の夜蛾の姿を見た5人は、一斉に散り散りとなって逃げ回る。
しかし数分後には、5人は捕まり夜蛾の説教と重たく鋭い鉄拳をくらったのだった。