【灰原雄】雨音に
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次の日。
この日は雨は降っていなくて、だから私は傘を持たずに寮を出た。
そしたら午後には降り出してきて、寮までの距離はすぐとはいえ土砂降りの雨の中を傘も差さずに行くのはちょっとなんか嫌だった。
どうしようかなって考えていたら、名前を呼ばれて肩を叩かれる。
ゆっくりと振り向くとそこにはニコニコと笑っている夜蛾先生がこめかみに青筋を立ててご立腹されていた。
「昨日なんで職員室に来なかった」
「昨日……?あ……。忘れてました」
すっかり忘れてた。
買い物から帰ったら職員室に行こうと思っていたのに、それどころじゃない事件が起きたからすっぽ抜けた。
私は夜蛾先生に手を引かれ職員室へ強制連行。
その様子を夏油先輩と五条先輩に見られて、めちゃくちゃ笑われた。
いや、あんたらがいつも怒られてるの私知ってますよ。
一昨日も大喧嘩してセンサー鳴らしたでしょうが。
と心の中で文句をつけた。
職員室でがみがみと叱られること数十分。
漸く説教が終わったと思って職員室の窓から外を見ると、雨はさっきより強くなっている気がした。
「せんせー」
「なんだ?」
「置き傘ってあります?」
「なんだ、オマエ。忘れたのか」
「忘れました」
「今日は雨が降るって予報で言っていただろ。テレビ見ないのか」
「あー……、」
テレビはあるけどいちいち付けては消すのが面倒で置物化している。
埃を被った状態のテレビを思い出したら、間抜けな声が出ていた。
「俺の傘使うか?」
「んー、もう少し待って、弱まらなさそうだったらください」
「貸すだけだ」
「せんせーは、雨、嫌いですか?」
「いきなりどうした」
「なんか、気になって」
「そうだな……。たまに降るくらいならいいが、毎日となるとあまり好きじゃないかもな」
「そう、ですか」
私はぺこりと頭を下げて職員室を出た。
後ろから「傘貸すぞ!!」と聞こえたが「大丈夫です」とだけ答えた。
結局私は寮に戻るまでの短い時間で、全身びしょ濡れになってしまった。
家入先輩は大きなため息を吐きながら部屋からバスタオルを持ってきてくれてそれで頭を拭いた。
「あんたは本当に天気予報を見ないね」
「なんか、見ても見なくてもおんなじかなって」
「そんなびしょ濡れになってんのによく言うよ」
また私の部屋でくつろぐ先輩。
煙草吸ってるけど、なんかもう注意するのも疲れた。
「先輩」
「ん?」
「一本ください」
「はぇ?」
私は先輩の許可を得ずに箱から煙草を一本取り出し口に咥える。
見よう見まねでライターを付けて煙草に火をつける。
上手くできなかくて頬を膨らます。
「火をつけたと同時に吸うんだよ。肺に空気を入れる感じで」
「……っげほ!!う”えっ!!」
強烈な喉の痛みと苦い味が襲ってきて思いっきり咽た。
くっそまず!!!
なにこれ。
よくこんなもの毎日吸ってるな、この人。
私は涙目になりながら、台所に行き水で火を消した。
「あー、もったいない。私の煙草……」
「明日買って返します」
「セッタ14ミリね」
ミリが何を示しているのかよく分かんないけど、煙草をくわえている先輩はかっこいい。
けど、やっぱり禁煙してほしいとも思った。