【灰原雄】雨音に
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灰原君が迎えに来るまで、私はコンビニで温かいお茶とおにぎり2個、そして甘いスイーツを購入した。
お礼として灰原君に渡すために。
暫く待っていると、バシャバシャと水しぶきをたてながら走ってくる人影が見えた。
ものすごいいい笑顔で。
まるでその姿が、ご主人様を迎えに来た犬のように見えて仕方がなくて、小さく笑った。
「お待たせ!!待った⁉」
「全然だよ。ていうか、本当にごめんね。ありがとう。はい、これ。お茶冷めちゃってるけど……」
先ほど買ったお茶は当たり前だが時間と共に冷めて、今では温かさなんて微塵も感じられない。
失敗した。
灰原君が来た時に買えばよかった。
しゅんとしながら袋に入ったそれを渡すと、彼は明るい笑顔で「ありがとう!!すごい嬉しい!!」と笑って。
おかしいな。
今日は雨が降っていてどんよりとしているはずのなのに。
ものすごく眩しいのはなんでだ。
目を細めた状態で灰原君を見つめると「どうしたの?」と聞いてくるから「太陽ってやっぱ眩しい」と言った。
そしたら頭の上にハテナマークを付けた灰原君が首を小さく傾げて、それがかわいいと思った。
二人で高専に帰るために駅内を出ようとした時。
「あ」
と、灰原君が声を漏らした。
「馨さん、ごめん。傘、一本持ってくるの忘れた」
どうやら彼は、私を迎えに行くと使命に囚われすぎて肝心の傘を忘れたらしい。
つまり今手元にあるのは灰原君の傘一本のみ。
もっと簡単に言うなら、相合傘で帰れという天の思し召し。
「えっとさ、もし嫌じゃななかったら一緒に帰ろう」
「うん」
別に嫌じゃないけど。
きっと私のことを気遣ってくれたのかもしれない。
ちょっと失礼かもしれないけど、灰原君そんな気遣いできたんだ。
意外だった。
私よりずっと背の高い灰原君が傘をもってくれて。
私は彼の隣に寄り添うように肩をくっつけて歩く。
歩幅の狭い私のスピードに合わせて歩く彼は、上から降ってくる水滴たちをじっと見ていて。
その横顔がきれいすぎて、私の心臓が痛くなった。