【狗巻棘】舞台、閉幕。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
なんて思っていたら、棘がいないことに気が付いた。
真希に聞いたら、忘れものを取りに部屋に戻ったらしい。
絶対誕プレだな。
任務帰りでそのまま教室に来たのなら、忘れても仕方ない。
「馨さん、演技下手くそですね」
「え?なにが?」
「とぼけないでくださいよ、棘先輩の事ですよ」
プレゼントを渡そうかと真希が言っている最中に、野薔薇が私に近づいてそう言ってきた。
「何か、あったんですか」
野薔薇は、よく人のことを見ているな。
隠し事はできないだろう。
でも、言えない。
夢の中で棘にキスをされたこと。
言ったところでどうにもならないから。
それよりも今はこの瞬間を、この関係をこれ以上拗らせないようにすること。
「何も。ただ、寝不足なだけ」
「……そうですか」
野薔薇、ありがとう。
私のために心配してくれて。
いや、恵や棘の事も心配しているのか。
野薔薇は優しい女の子だから。
「じゃあ、私からな。ほい、この前欲しいって言ってたろ」
真希が先頭を切ってプレゼントを渡してくれた。
中身をみれば、花柄のタンブラーが顔を覗かせた。
「可愛い!!真希、ありがとう~!!」
「大事に使えよ」
「使うに決まってんじゃん」
真希に抱きついて、私はじっとタンブラーを眺める。
彼女の前でこれを欲しいと言ったのは随分前の事だ。
それを覚えていてくれたなんて。
こういうところマジでかっこいいと思う。
パンダからはパンダのぬいぐるみ、悟からはHOT LIMITの衣装、悠仁からはパチ屋のお菓子、野薔薇からはサボンのボディローション。
一部もらっても嬉しくないものもあったけど、私のために時間を割いてくれたと思えば、少し嬉しい。
けど。
「TMの衣装は流石に着れない」
「絶対似合うと思って買ったのに」
「明らかにふざけたろ」
いつどこで何のために着ろと言うんだ。
あれか、台風の中で歌えばいいのかこれ。
なんて思っていたら恵が私の腕を引いた。
「馨さん、誕生日おめでとうございます」
彼は小さな袋を目の前に出した。
綺麗にラッピングされた包装紙を解いて、中身を見れば。
箱から出てきたのは真っ赤なガラス玉が埋め込まれた真っ白な箱。
「オルゴール……?」
「聴いてみてください」
そう言いながら、恵は私の手の中にあるオルゴールを取ると、ゼンマイを巻いた。
綺麗な曲を奏でるオルゴールに胸が躍る。
優しく柔らかい音色。
「恵ありがとう!!すごい嬉しい」
「このガラス玉見たら馨さんのこと思い出して」
恵も嬉しそうに笑う。
こんなおしゃれなモノをもらえるなんて思ってなかったからすごく嬉しくて……。
その時。
かしゃん。
何かが落ちる音がした。
人の声とは違う音。
その音に振り向けば、教室の外で中の様子を見ていた棘の姿を見つけた。
揺れる棘の瞳と私の瞳がぶつかると、彼は逃げ出した。
何かを手に持って。
「棘!!」
逃げる棘を追いかけようと教室の扉を開けると、足元に何か落ちているのに気が付いた。
拾って確かめてみるとそれは説明書だった。
真っ赤なガラス玉が埋め込まれた真っ白な箱のオルゴール。