【加茂憲紀】まだ間に合うからジュリエット
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「行きたいよ!?そりゃ旅行に行きたいよ!でも男4の女1だよ!?温泉で泊まりだよ!?浴衣とか着ちゃうんだよ!?ラッキースケベとかあるかもじゃん!乙骨と伏黒に関してはそういうことはないかもだけど!でもさ、でもさぁ!少しは渋ったりしてほしいじゃん!」
束縛されたら面倒だけど!!と怒りをフライパンにぶつけて炒める。
バーカ、知るか、アホ、私は何を望んでいるんだ、バーカ。
玄関のドアが開く音がした。
ただいま、と事務的とも言える声が聞こえる。
加茂がロードワークから帰ってきたのだ。
「おかえりなさい!」
語尾まで押し付けるように叫び返すと、すぐにキッチンのドアが開いた。
「馨」
「なに」
「機嫌が悪いのか」
「そうです!」
見てわかんない?と挑発も加える。
へへーん、加茂なんて怖くないもんね。
バーカ。
とまではさすがに言えない。
「昨夜、ちゃんと眠れたのか」
「寝たよ、隣で寝てたでしょ」
本当に"何もない"穏やかな夜でしたね!
「朝食は」
「食べたよ、いっぱい」
「ホルモンのバランスが崩れているのかもしれない」
冷蔵庫の開く音と一緒に、前に馨が言っていただろう、と加茂が喋る。
「排卵日の前後は情緒不安定になると。自己管理はしっかりしたほうが良い。日付で言えばそろそろ……」
「それ以上何も言わないで」
ガスの火を止めた。
振り返ると、加茂は無言でミネラルウォーターの口を開けていた。
上着は暑くて脱いだのだろう。
Tシャツを着ていた。
彼の顎から汗がぽたりと落ちた。
「お願いだから、」
と私は深呼吸をする。
「まずキッチンから出てって。それからシャワーを浴びてきて。話があるならその後にしましょう」
何の話をするかは知らないけれど。
加茂は怒った様子もなく、頷いた。
すんなり出て行く彼に、素直か!と心の中で突っ込む。
セクハラまがいの発言したのに小さい子どもか!
なんだよ可愛いムカつく可愛い!
浴室へ向かうその背中に抱きつきたいような、菜箸を投げつけたいような気持ちになる。
妙なところは鋭くて、大体は鈍感で、私のことなんて興味がなくて、でもちゃんと見ているような節もあって。
でも私のために彼が何かを我慢するなんてことが、今までにあっただろうか。
いや無い。
好きだけど嫌い、ムカつくけど可愛い、でもやっぱりカッコいい、もっと嫉妬してほしい。
私のことでもっと心を乱してほしい。
旅行中、万が一でも私が何かしらのそういう過ちを犯したら加茂はどんな顔してくれるんだろうか。
金を払えば虎杖か五条さんは手を出してくれるかもしれない。
バカか、と呟いて菜箸を置いた。
私は何がしたいんだ。
これじゃ真希の言う通り、ただの面倒な彼女だ。
死ね。
狗巻の呪言が使えたら今すぐにでも全員ぶっ飛ばしてる。
八つ当たりだ、カッコ悪い。