【加茂憲紀】まだ間に合うからジュリエット
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"東京校の生徒が、加茂家の男と交際している"
という事実を、私は長いこと秘密にしていた。
理由は言わなくても分かるだろう。
付き合った経緯なんて今更恥ずかしいから聞かないで欲しい。
モンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエット。
ジェット団のトニーとシャーク団のマリア。
とにかくつまり、そういう覚悟で、私は加茂の彼女になった。
隠しているうちに、最後の学年が終わり、学校も卒業した。
私は元東京校の生徒になり、加茂は元京都校の生徒になった。
それでも私たちは付き合っていた。
もしかしたらいずれ結婚するのかもしれない。
そう考えると、 いつかはバレることだと思った。
だから袋叩きに合う覚悟で、自ら東京校の人たちに報告したのは大分前のことになる。
特に御三家の出身である真希と真依、禪院家の血を引いている伏黒、五条家の当主であり最強の呪術師である五条悟にはわざわざ飲みの席を用意して発表した。
実は加茂と付き合っている、と。
乾杯した直後に打ち明けた時、テーブルを囲んでいた大半がビールを噴き出した。
ミスト状になったアルコールと咳込む音が舞う中で、真依に一言だけ「死になさい」と言われた。
それでも時の流れが持つ力はすごいものだった。
彼らは長いとも言えない月日を経て、私の彼氏は加茂憲紀という現実を受け止めた。
今でもなんだかんだ言いながらも一緒に飲んでくれるのだから、非常にありがたいことだと思う。
しかし不思議なことに、年々、私への風当たりは強くなっている。
特に真依からの風当たりは台風並みに強烈だ。
「お前は面倒くさい彼女だな!」
いまや真希は、無遠慮に箸の先を私に向けてくる。
「四六時中恋人のことを一番に考えるなんて無理な話ですよ。早く気付きましょう」
伏黒は大抵上から目線。
「ましてやあの憲紀だもの」
真依はその細い身体のどこにそんなに食べ物がはいるんだと疑問を持つほどひたすら何かを食べては飲んでいる。
「結局はさ、馨。みんな自分の用事が一番大事なんだよ」
五条さんですら私の味方になってくれない。
……この人が味方になってくれたことあったかな。
「私、あの人に全然構ってもらえない。大切にされてる自信がない」
悲しみを露わにすれば、それは違う、と口を揃えて反論される。
「お前は大切にされている。ただ相手が悪い。お前も悪い」
そして最後には、だから女は、そう言う男は、という水掛け論に発展し、打開策もないままにお開きになる。
という内容の飲み会を繰り返していた。
だから私の旅行に行きたいという呟きは、とある男の心の蔵に突き刺さり一部の人間を除いてにわかに盛り上がらせた。