【虎杖悠仁】ときめき
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
羽田空港の椅子に座って搭乗ゲートが開くのを待つ馨は、キャリーケースにつけたカービィ―を眺めている。
寂しくならないようにと、持ってきたけど逆効果だったかなと考えてしまい、首のネックレスに手を掛けた。
でも、置いていくと言う選択肢もできない。
後悔はしたくない。
しないために持ってきた。
そんな彼女の前に二つの影が現れる。
「美々子、菜々子」
「見送り来たよ」
「これ東京土産」
美々子と菜々子は手にした袋を馨に渡す。
その中には東京名物である東京バナナや東京ジャンドゥーヤチョコパイなどのたくさんのお菓子が入っていた。
「ありがとう。いくら?」
「いらないよ。餞別」
にこっと笑う友人二人に馨も笑う。
本当は誰にも見送りに来ては欲しくなかったけど、ずっと一緒にいた美々子と菜々子だけには日程を教えた。
自分の夢を美々子に話さなかったことを美々子は怒ってはいたが、依存してしまう癖のある彼女には言えなかった事を伝えば拗ねはしたが納得はしたようで。
旅立つその日まで美々子もまた彼女の背中を押し続けた。
「なんかほしくなったらラインでもしてよ。送るから」
「うん」
「本当はさみんな見送り来たがってたみたいだよ」
「知ってる。でも、会ったら決意鈍りそうだし」
「……虎杖とは、ちゃんとお別れできたの?」
美々子の言葉に、馨の動きが少し止まった。
それはできていないことを示唆していた。
何か言いたそうにする菜々子を美々子が止める。
「それでいいんだね」
「うん……」
「馨の気持ちもわかるけど、残された方の気持ちも考えてね」
「……時間が経てば忘れることもあるし。離れる私なんかよりももっと素敵な人、いるだろうし」
「言わなくてもいい事も……あるしね」
「菜々子ぉ、私泣きそうだ……。早めに搭乗口行こうかな」
「もう少しお話しようよ。時間あるんでしょ」
美々子が馨の隣に座る。
菜々子がトイレだと言い、彼女から少し離れた場所へと移動し電話を掛ける。
「イエローよりホワイト、イエローよりホワイト!!」
「はい、こちらホワイト~」
「ちょっと何してんの⁉もうすぐ搭乗口入っちゃうんだけど!!」
「待て待て。もうすぐ着くから、引き留めておけ。どうぞ」
「引き留めてるわよ‼だから急げっつってんの!!」
「はいはい、了解了解~。どうぞ~」
「その口調腹立つ!!」
乱暴に電話を切って、菜々子は馨の元へ戻った。
他愛の話をしてなんとか虎杖が来るまでの時間を稼いでいた。
虎杖は急いでいた。
五条もまた焦りの色を見せていた。
菜々子から電話があったのはちょうど高速を降りた頃。
ここからは変にスピードを出せない分、焦りが生じるもあの双子が時間を稼いでいることを信じていた。
羽田空港に到着したのは電話を切って10分経つか経たないか。
我ながら最高の運転をしたと誉める五条に虎杖は。
「ありがとう先輩。このお礼は……」
「いいから早く行け。生まれてこの方25年。こんな熱い走りをしたのは初めてだぜ」
「いや、先輩まだ10代」
「うるせえな、早く行けって。んで、自分の気持ち伝えて来い」
「うっす!!」
扉を閉めて、虎杖は走る。
誰もいなくなった車内、五条は深く息を吐いた。
「ホワイトより前髪。全ての作戦、無事完了」
「了解。美々子達と合流した。悟もさっさと来い」
「はいよ」
馨と他愛ない話をして時間を稼いでいた、美々子達のスマホが音を立てて鳴った。
開けば、夏油からのラインで【全て完了】とだけ書いてある。
それみた美々子と菜々子はお互いに顔を合わせて一度頷く。
「あ、お土産もう一つ買うの忘れてた。ちょっと買ってくるから馨待ってて」
「え、まだ買うの?」
「餞別はたくさんあった方がいいでしょ。絶対そこから動かないでね」
「わかった」
二人は馨から離れ夏油たちのいる場所へと向かう。
夏油が二人を手招きして、そっと影から見つめる。
少し遅れて五条もやってきた。
「お疲れ悟」
「傑もな」
ごつんと拳を合わせる二人。
ここまではどうにか全ての作戦は成功した。
あとは本人次第。
こればかりは彼等にはどうしようもなく、ただ祈るしかできない。
「来た!!」
伏黒の声に、全員視線を向ける。
馨を探して走り回ったのだろう。
虎杖の肩は大きく上下していた。
馨の座るベンチの後ろの虎杖はいる。
が、馨は気づくことなくスマホをいじっていた。
固唾を飲む5人。
馨を見つけた途端、石にでもなったのかと思うほどに、虎杖はその場から動かない。
「なにしてんだ、あのバカ」
「あいつ、何のためにここまで俺が連れてきてやったと思ってんだ」
伏黒と五条が唇を噛んで眉間に皺を寄せる。
彼らの気持ちなど知らない虎杖は、何を思ったのか踵を返して帰ろうとした。
「帰るのか?マジかよ。マジでかけてやる言葉ないのか?もう会えなくなるかもしんねえんだぞ」
誰よりも虎杖の恋愛を応援していた五条。
可愛い後輩のために人肌脱ぐと決めた瞬間から、五条は虎杖の為にやれることはやってきたつもりだった。
仮免もそのうちの一つに過ぎない。
だからこそ、思う。
「言えよ、悠仁!!!」