【虎杖悠仁】そよめきなりしひたむきなり
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「な、何しに来たんだよ伏黒」
「部の連絡事項を伝えにきた」
「んなのLINEで連絡しろよ」
虎杖の声にはささやかな羞恥と明らかな不服の色が混ざっていた。
しかし伏黒は歯牙にも掛けず、「長文に既読だけつけて結局読まない人には、直接言いにいった方が確実だろ」とさらりとしている。
それに、こういう連絡は少しでも早く伝えた方がいいと思って、と、一呼吸おいた後、彼は伝言を簡潔に述べた。
「今回のテスト、1教科でも赤点とったら、補習で遠征試合参加できないらしいぞ」
「え、マジ?」
驚いた様子で虎杖が尋ねる。
「まじ」
「英語も?」
「1教科でもつったろ」
「それ今になって言う?」
「しょうがねえだろ。俺だってさっき知ったんだから」
面倒臭そうな様子で、伏黒は尚も口を開いた。
「あと、明日の朝練は追い込みと技の練習、試合稽古を中心にやっていくそうだ。今日撮った動画データ、釘崎があとで共有しておくからちゃんと見ろよ。それから放課後練も勿論あるから絶対に遅刻すんな。あとは、」
そこで一度言葉を切り、視線を下げる。
「夏休み中、釘崎の誕生日があるからそろそろプレゼントを何にするか話し合いたいなと思ってる。うっすらでいいから考えてもらっていいか。それから、遠征試合の日程についてなんだが―――」
「ちょちょ、伏黒、その話ってまだ続くのか?」
虎杖が声で遮った。
彼の目が一瞬馨の方に向けられたのを、伏黒は見逃さなかった。
「まだ続くぞ」
と彼は言った。
「あのさぁ」
「それが嫌なら」
非難の言葉が向けられるであろうその前に、伏黒は抑揚のない声と表情で牽制をした。
「残りは文字で送るから、最後まで目を通すならの話だけど」
「頼むよ。ちゃんと読むから」
「ちゃんとだぞ」
虎杖がこくこくと首を縦に振るのを確認してから、伏黒は、「頼むぞ」と最後の釘を刺して踵を返した。
当然のように、馨にも軽く頭を下げて。
そして彼は開いたままのドアを敷居をまたいで振り返り「じゃあ」と澄まし顔で皮肉めいた風に言葉を発した。
「邪魔したな。引き続き、おふたりでごゆっくり」
「ふっふっ、ふしぐろ!?」
「わかってる」
そこではじめて、伏黒は無表情を崩した。
ニヤリと笑って、口にチャックの仕草をして去って行ったのだ。
他の部員には、特にマネージャーである釘崎には、オマエがその女子に何をしようとしていたのかは内緒にしますよ、という意思表示。
「~~~っ、あいつ……!」
完全におちょくられ、虎杖は今度こそ赤面した。
あの様子から察するに、きっとだいぶ前から見られていたのだろう。
もしかしたら、伏黒にとっては剣道の話題をダシにして、隣で下を向いて黙り込んでいるこの女子生徒にセクハラ紛いのことを試みたことが彼の癇に障ったのかも。
そう考えて、あー、もう格好悪ぃ、と虎杖は髪の毛をわしゃわしゃと掻いて上を見た。