【伏黒恵】Stay, My Darlin'!!
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「うわー、なんもないね」
部屋に入って第一声、馨さんはそう言った。
「座るとこもない」
確かに、俺の部屋にはベッドと机くらいしかない。
馨さんはしょうがなくベッドの端に腰掛けた。
いつも、俺が、寝てる、ベッドに。
彼女の行動1つ1つを、そういう目で見てしまう。
だってそうだろ?
自分の部屋に好きな人がいるんだ。
幸せすぎて頭がくらくらする。
「虎杖、明日の夜まで帰ってこないんです」
俺も馨さんの隣に座った。
「泊まっていきますよね?」
「いや、そんな話、聞いてないけど」
「泊まってってください」
細い両肩を掴んだ。
そのまま唇を奪いそうになるが、冷ややかな目線に気付いて固まる。
落ち着け。
学習しろ。
深呼吸、平常心。
右手で自分の頬をバチンと叩いた。
流石にびっくりしたのか、馨さんが目を見開いた。
また彼女に顔を近づける。
「……キス、してもいいですか」
「伏黒、顔こわいよ」
「したいです」
「キスだけでいいの?」
「……っ!?」
よくないです、と頭だけで返事をして、唇を押し付けた。
もう無理もう我慢できないもう限界。
「いいよって、言って、ないんだけど」
リップ音の合間に彼女が言葉を挟んだ。
耳を貸さずに乱暴に舌をねじ入れて、相手の舌を絡めとる。
濡れた唇が気持ち良すぎて、それだけで興奮する。
息が苦しくなって唇を離す。
俺は肩で大きく呼吸をするのに、馨さんは余裕の表情で「まぁ、今日はしないけど」と言った。
ナイフで心臓を抉られたような衝撃が走る。
「なんでですか」
俺は馨さんに詰め寄った。
「ヤです、シたいです」
頭に血がのぼって、返事も待たずに押し倒した。
ギシ、とスプリングが軋む。
乱暴に手首を押さえつけて、彼女の上に跨った。
細い腰に指を這わせる。
「そこはやめて」
姉が弟に諭すような口調で言われた。
手が止まる。
それならばと下腹部を撫でようとすると、また「そこも駄目」と声が飛んできた。
舌打ちをする。
あれもダメ、これもダメ。
じゃあ一体何ならいいんだよ!
興奮と苛立ちがピークに達してワンピースの裾を乱暴にめくり上げた。
隠れていた白い下着が現れる。
「やめなさい、恵」
人を殺せるんじゃないかと思うほどの鋭さで怒られて、手から布が落ちた。
白い脚の上に落ちて彼女の下着を再び隠す。
「な、んで」
右手で握り拳をつくる。
震えるくらいに力を込めて握りしめる。
でもその拳を彼女に振り下ろすことは死んでもできない。
俺だって男だ。
力で捩じ伏せることもできる。
無理矢理にでも事に及ぶことだってできる。
できるけれど、できないんだ。
馨さんの言葉1つで思考も身体も止まってしまう。
なんでかはわからない、只の言葉なのに。
「ダメ」
馨さんが念を押すようにゆっくりと言った。
その注意のしかたは、学校の先生のようでもある。
「だめですか、なんで、いいでしょ」
「伏黒はよくても私はよくない」
「お願い、します」
馨さんの肩に額を乗せて、ねだるけど許可は下りない。
なんで。
なんでだよ。
馨さんばっかり余裕でずるい。
悔しい。
苦しい。
「せめて胸、だけでいいんで」
触らせてください、と小さな声で言った。
返事はなかった。
馨さんは俺の頬を両手で包んで、優しくキスをした。
何度も角度を変えて、次第に深く、何度も何度も。
舌で上顎を撫でられると、脳がじんわりと蕩ける。
乱暴な俺のとは全然違うキス。
まるで、口付けとはこうやってするものですよ、と黙って教えられているようだ。
唇が離れたあと、俺は馨さんの顔をじっと見た。
どうして、と頭の中で問いかける。
どうして男の部屋に来てもそんなに余裕なんですか。
そのキスはどこで覚えたんですか。
誰から教わったんですか。
こんなに距離を感じるのは、俺が1年で、貴女が3年だからってだけじゃないですよね。
返ってきたのは笑い声だった。
「ごめん、ちょっと思い出し笑い」
何を思い出したんですか。
昔の恋人とかですか。
それさえ聞けずに途方に暮れる。
「馨さんは、俺のこと本気で好きなんですか」
「うん、好きだよ」
じゃあなんで、とまた頭の中で聞き返す。
これでは堂々めぐりだ。