【五条悟】月が
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日中の暑さが、夜の闇に吸い込まれる時刻。
あなたは、薄暗いリビングのソファに寝転び、テレビを見ていた。
芸能人の不貞を騒ぐ退屈なワイドショー。
突如、緊急記者会見の映像に切り替わる。
眼鏡をかけた初老の外国人が、重々しい口調で英語を読み上げた。
あなたは英語が理解できなかったが、画面下に出てくる字幕によって月が地球に接近していると知る。
きっかけは、遥か遥か遠くの宇宙で、土星に巨大な隕石が衝突したこと。
衝突により重力は崩れ、内部で核反応が連鎖した結果、土星核爆発が起こった。
この爆発について、あなたには心当たりがある。
昨日の深夜、空が一面明るくなったのだ。
夜更かしの得意なあなたは、町中の誰よりも一番に窓を開けて外を見た。
太陽以外でも光源さえあれば、夜でも空は青くなることをあなたは人生で初めて知った。
その後に、土星が消滅したと耳にした。
土星爆発による衝撃で、地球の周りを規則的に周回していた月がバランスを失った。
月は公転の軸から外れ、地球の引力に負けて落下してくる。
衝突した場合、地球の裏側までマグマに覆われ、各地で大小の爆発が発生する。
生命活動を維持することは、絶望的な環境となる。
淡々と流れるその字幕を眺めていたあなたは、ふと目眩を覚える。
ブラウスの下で、背中に汗が伝っていくのがわかった。
「嘘だ」
出した声が無人のリビングの中に消えると、あなたは後ろを振り返る。
これ、音が静かなのよ。
とかつて母親が買ってきた扇風機だけが、首を横に振っていた。
それを見て、急に動悸が早くなる。
世界にはいま、自分しかいない。
あなたが最初にとった行動は、スマホを持って『え』だの『やばい?』だのと打つことだった。
両手がガタガタと震えだす。
『?』を『ん』とタイプミスした直後、あなたは耐えきれずそれをソファに投げ捨てた。
立ち上がり、部屋中の電気を点ける。
目の周りに痺れを感じ、ようやく自分の呼吸が浅く早くなっていることに気が付いた。
発作的な過呼吸を抑えられずに、玄関扉にしがみつき裸足のまま外へと転がり出る。
酸素がない。
手足が痺れ、夕暮れ道に黒いもやが広がり始める。
視界が黒に覆い尽くされる直前、目の前にふらりと人影が現れた。
夕暮れ時で顔がわからなかったがあなたには、相手が誰なのかはっきりわかった。
ほとんど息も出さずに「五条」と名前を呼ぶ。