【虎杖悠仁】ときめき
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「あ、馨ここにいた」
入れ替わる形で菜々子がやってきた。
菜々子の額には汗が滲んでいる。
一体部屋では何が起きているのか。
盛り上がっている声がここまで聞こえてくるたびに、中の様子が怖い。
「今ね、傑兄さんと五条さんが伏黒と七海さんを捕まえて4人で歌ってる」
「犠牲者いるじゃん」
「これがさ伏黒君と七海さん、諦めたのかめっちゃ歌ってんの」
「まじで?」
ケラケラと笑う菜々子に信じられないと言う顔をする馨。
成程、こんなに大いに盛り上がっているのは、あの二人が吹っ切れたからか。盛り上がらない訳が無い。
と謎の分析をしだす馨に菜々子は静かに声をかける。
「で、虎杖とはどうなの?」
「どうって言われても、進展なしだよ」
「あのことは話したの」
静かに首を振る。
「言ってないの⁉何やってんのよ、早く言わないと」
「うん……」
「あのね、前にも話したけどさ。ちゃんと言った方がいいと思うよ。大事なことなんだから」
下を俯いて何も言わない馨。
菜々子はソファに座り、馨との距離を縮める。
「まさか黙るつもり?」
「…………」
「馨、あんたねえ!!」
「わかってるよぉ!!」
「女は度胸でしょ?私たちがなんのために大勢で誕生日祝ってるかわかってる?」
菜々子や美々子、傑たちがなんのためにこんな大勢で誕生日を祝っているのか。
その理由は、「素直になること」が目的だった。
いつも二人で誕生日を祝っていたがために、なかなか進展もせずに気持ちも言えずにいた。
ならば逆ならどうかと真希は考えた。
大勢で騒いで遊べば、その流れで口を滑らせることがあるかもしれない。
滑らせることはなくても、出来上がった熱に舞い上がり素直に気持ちを伝えることができるかもしれない。
そう言う賭けのようなものだった。
結局、何も進展しないし何より馨が「本当」に伝えなければいけないことを彼女はまだ虎杖に言っていない。
菜々子にとってはそっちの方が大本命に近かった。
「だって……」
「だってじゃないでしょ。……馨さ、例えば虎杖から告白されたらどうすんの?」
「……………」
「はぁ」
「だって、もっと早くから付き合ってたら違ってたって思うけど、もうずっと私たちこんなんなんだよ?仕方ないじゃない」
まるで自分に言い聞かせるように。
馨はただ下を向いて俯いている。
尖る唇は一体何に不満を持ち拗ねているのだろうか。
「……恋人と自分の夢、天秤には欠けられないの?いいじゃん、別に。遠距離で」
菜々子の言葉に馨は掌をぎゅっと握る。
「虎杖、中学の時彼女いたんだよ。小倉さんって子なんだけど。中学卒業すると同時に別れたの。遠距離だからって理由で。仙台と東京でだよ?もう遠距離は絶対嫌だって、虎杖言ってたもん。私は、外国だし……」
「はぁ~、くっそつまんないね、それ」
「え?」
「私だったら距離関係ないね」
「菜々子とは違うもん」
「ふん、貧乳」
「うるさいギャル」
二人の間に沈黙が生まれた。
こういう風にお互いに言いあうことは珍しくない。
その為空気が悪くなることはないのだが、それでも一方的に責められている気分になる馨は、この状況に嫌気がさしている。
「二人ともお似合いだと思うけどね。まぁ、せいぜい告白されないように気を付けることだね」
「なにそれ」
「告白される前に彼にウィーンに行くって伝えること。そうじゃないと虎杖のこと、ますます傷つけることになるよ」
菜々子はそう言うと、ソファから立ち上がり部屋へと戻って行った。
一人残された馨は手の中にあるネックレスに視線を落とす。
「……わかってるよ、そんなこと」
ぽつりとこぼれた言葉は吸い込まれるように掌の中に消えていった。