【虎杖悠仁】ときめき
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「あ、カービィだ」
ゲームセンターで遊んでいた彼等は、どこかでご飯でも食べようと話をしていた。
その時、馨はたまたまそれを見つけた。
掌より少し大きいサイズのぬいぐるみに目を奪われたのか、じっと箱の中でこちらを見つめるカービィと視線をぶつけ合う。
「ほしいの?」
「うん。でも、こういうのって難しいからいいや」
「取ってやるよ」
「まじ?」
隣に立つ虎杖がまさかそんなことを言うとは思わずに、大きな声が出たが、ゲーセンの音の方がうるさく、周りの人の迷惑にならなずに済んだ。
「俺が500円以内にこれ取れたら、飯奢ってね」
「え~。私今日誕生日なのに。500円で取れるわけないでしょ」
「いいじゃん、それくらい」
「わかったよ。寿司でも肉でも奢ってやるわよ」
「よっしゃ!!」
俄然やる気を出した虎杖は、制服をまくりお金を入れた。
アームが動く。
虎杖は真剣な表情でアームの位置とぬいぐるみの位置を調整しする。
そしてボタンを押せばゆっくりとアームは下に降りて、カービィの体を掴む。
がしり、という音が聞こえたのではないかと錯覚するほど、しっかり掴まれたそれは落下口へと落ちた。
「すっご!!虎杖すごいよ‼」
「俺もびっくりした!!まさか一発で取れるなんて思ってなかった!!」
「めっちゃ嬉しい!!まって、かわいい!!」
取り出し口からぬいぐるみを引っ張り、ぎゅうと抱きしめる。
きゃっきゃっと騒ぐ馨それをスクールバックに早速つける。
見せびらかすように「どう?どう?」と聞いてくる彼女に虎杖は「いいじゃん、かわいい」と答えた。
満面の笑みを零す幼馴染の姿に虎杖も満面の笑みで笑う。
「虎杖、何食べたい?」
「うん?」
「だから、何食べたい?これ取ってくれたお礼。ご飯奢るって約束」
「あー……」
虎杖は少し視線を反らし、頭を掻いた。
「いいよ」
「ん?何が」
「俺が飯代出すから、馨が食べたいもの食べに行こう」
「え、でもそれだと……」
「今日誕生日じゃん。誕プレが100円で取れたやつってなんか、嫌だろ?」
「虎杖……」
きゅん、と心臓がしびれた。
照れたような困ったような恥ずかしそうな表情をする虎杖の胸に、今すぐ抱き着きたい衝動が生まれたが、それを抑え込み大きく首を立てに振った。
去年の事を思い出し、にやける顔が元に戻らない。
そんな友達の姿をみて、美々子と菜々子は顔を見合わせた。
「たった100円で取れたものに、あんなに喜べるもん?」
「菜々子。金額じゃないんだよ、気持ちなんだよ」
「そういうもん?」
「そういうもん」
顔を両手で隠して足をばたつかせる馨。
どこからどう見ても虎杖に気があることは明白。
だけど頑なに認めようとせずに、ずるずると今の関係を続けようとする馨に、二人はどこか煮え切らない様子。
「馨……」
「美々子」
何かを言いたそうにする美々子の肩を菜々子が掴み、静かに首を横に振った。
彼女に何かを言ってもそれを受け入れないであろうことは薄々気づいている。
眉を下げる美々子の瞳が少し揺れたのを菜々子は見逃さずに、そっと肩を抱いた。
もうすぐ彼女の16歳の誕生日がやってくる。
今年もまた虎杖と二人で出かけるのだろう。
「言うと思う?」
「思わない」
「だよね」
「どうしよう」
「傑兄さんに相談してみる?」
「……もう少し、様子見てからに、しよ」
「うん……」
時間がない、と小さく呟いた美々子の言葉に、菜々子は何も言わずに静かに瞳を閉じた。