【加茂憲紀】もしも
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神社に着き、二人でお賽銭をする。
馨がお賽銭している間、私はしゃがんで彼女の後姿を眺める。
そして最後の「もしもの時」の話をする。
「もし、私が心中しようって言ったらどうする?」
ゆっくりと馨は振り向く。
大きな瞳は驚いていて、すぐに後悔した。
言うんじゃなかった。
これは「もしもの時」の話じゃない。
半分冗談で、半分本気の私の願望だ。
「……なんてね。冗談だよ、あまり本気にしないでくれ」
へラッと笑う私の前に足音が近づく。
馨が目の前でしゃがみ込む。
私の瞳に彼女の顔が写りこんだ。
その真っすぐな瞳に、少し怖気づいたのは秘密にしてほしい。
どこまでも真剣な表情の馨は、小さく息を吸うと口を開いた。
「心中、する?」
意外な言葉に私の思考回路は止まる。
瞬間。
体が大きく傾いた。
目の前には澄んだ青い空と、馨がいる。
ああ、私は押し倒されたんだ。
「馨!!雪だったからよかったけど、コンクリートだったらどうするんだ。今頃私は頭をぶつけて怪我してるか下手したら死んでいるところだぞ」
心臓がひやっとしたのは秘密。
いくら地面が雪とはいえ危ないものは危ない。
「怪我したら反転術式で治してあげる」
「そう言う問題じゃ……」
馨に注意しているというのに、当の本人は聞いていない。
それどころか、私の言葉は彼女の行動によって掻き消された。
馨は私の右手を手に取り、自分の首に持って行く。
馨の右手は私の首に。
つまり、お互いにお互いの首に手をかけている状態。
「心中、してもいいよ」
私の上に馬乗りになる彼女の瞳は真剣だった。
真剣に私のことを見ていた。
静かな時間が流れる。
聞こえるのは、遠くから聞こえる犬の鳴き声と屋根から落ちた雪の音。
それだけ。