【伏黒恵】あなたに聞きたいことがある。
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「なぁ、伏黒の父ちゃんと母ちゃんってどんな人だったんだ?」
体術の授業。の休憩中。
なんとなしに虎杖は伏黒にそう尋ねた。
自分の事をあまり話さない伏黒に、姉がいたと知ったのはつい最近のこと。
そのためか、虎杖は彼の両親のことが気になった。
「あんまり覚えてない」
「えっ!?なんか、ごめん……」
「いや、気にしなくていい」
あまり触れていい事ではないと思った虎杖は思わず謝ってしまった。
だけど当の本人が何も気にしていないために虎杖はそれ以上言葉を紡ぐのをやめた。
幼い子供たちを置いて、他の女を作り蒸発したと思っている伏黒はあまり父親という存在にいい印象は持っていない。
そもそも、伏黒は自分の父親の姿を知らないでいた。
そのために両親と過ごした記憶は何一つなく、幼い記憶と言えば姉である津美紀と保護者である五条と過ごした日々だけ。
だからと言ってそれが不幸せだと思った事がない。
「小さい子供を一人にしてしまうなんてひどい親だね」なんて言われても、ピンとこなかった。
禪院家に売られる予定らしかったが、五条のおかげで伏黒という名字で、姉である津美紀との日々を送れている今、五条には感謝していた。
その津美紀は呪いによって寝たきりになってしまったとしても。
「案外、酷いのは俺の方かもしれない」
「え?」
ぽつりとつぶやいた言葉は虎杖には聞こえなかったようだ。
そのことに伏黒は安堵した。
俺は、両親の事を全然覚えていない。
全然知らない。
なんでいなくなってしまったのかも。
俺はそんな事すら知らないんだ。
そう考えると、酷いのは、一体どっちなんだろうか。
答えのない疑問を抱きながら。
伏黒は青い空を見つめた。
その日の夜。
夢の中にいた伏黒は自然と目が覚めた。
時計を確認すればまだ夜の2時を過ぎた頃で。
なぜこんな中途半端な時間に起きてしまったのかと冴えた頭で考えていた。
その時。
どこからか自分の名前を呼ぶような、声が、伏黒の耳に届いた。
「……み、……恵」
「五条、先生……?」
伏黒を下の名前で呼ぶのは高専内では禪院真希か五条悟のみ。
しかし声の低さからすると男のもの。
ということは、もしかしたら担任である五条がなにかしら用があって、自分を呼んでいる可能性が高いと伏黒は踏んだ。
ベッドから起き上がり、部屋の扉を開ける。
しかしそこには誰もいない。
暗い廊下だけが広がっているだけだった。
だけど、自分を呼ぶ声はずっと聴こえている。
「なんなんだ……」
不審に思いながらも、名前を呼ぶ声が聞こえる方へと歩を進めた。
高専を出て、敷地内の山の中。
その奥の方まで、伏黒は歩く。
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