第3章 尊尚親愛―そんしょうしんあい―【NG】
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【OKシーン】
「何が?」
「ごまかさなくていいですよ。今は私たちだけですから」
「………カマ、かけてる?」
「あなたにそれが通じるとは思っていませんが」
「…………いつからだよ。気づいてたの」
「先ほどあなたがあの子の髪の毛に触れた時です。気づいた、というよりは"そうなのかな"と思っただけです」
「カマかけてんじゃん、結局」
マスク越しで五条は七海を睨む。
表情筋の硬い七海は、五条の視線を無視し暗くなり始める空を眺めている。
「どーせ馬鹿にしてんだろ。しっかりしてるからな七海は」
「自分でしっかりしているとは思っていませんが貴方よりはしっかりしていることは自負しています」
「やっぱ馬鹿にしてんだろ、お前」
五条は容赦のない言葉に何度目かのため息を吐いた。
そんな彼の姿を珍しいものを見たかのように少しだけ瞳を開いた。
「でも、まぁ。ありえないよ。普通に考えて」
「……何がですか」
「言わなくてもわかるでしょ。僕のこの気持ちが本当でも嘘でも、許されないことなんだよ」
「まぁ、世間一般的にはそうですね」
「だからいいんだよ。普通に。あの子が好きなやつの隣にいて。笑ってさえくれれば」
遠くを見るように五条はそう言う。
七海は彼からそんな言葉が飛び出して来るとは思っていなかった。
唯我独尊、天上天下。
この言葉を擬人化したような人間、それが五条悟だと七海は思っていた。
しかし、今目の前で傷心している男はその言葉とは程遠い。
この人でも。こんなに傷つくことがあるんだな。強奪するイメージがあったけど。
七海の心の声など知りもしない五条は、知られてしまった自分の気持ちをどうするべきかを考えていた。
【OK後】
「……演技ですか?」
OKを貰った五条は、待機場所で水を飲んでいた。
そこへ少し遅れて来た七海が意味深に五条に話しかける。
「……なにが?」
七海が何を言いたいのか分からないほど鈍感な男ではない五条。
しかしわざと分からない振りをした。
分からないふりをしていると言う事を分かっている七海は、眼鏡のブリッジを静かに上げた。
次のシーンの準備をするためにあわただしく動いているスタッフを横目に、七海はケータリングのお茶の蓋を開け乾いた喉を潤す。
「まぁ、そういう役ですからね。はぐらかしても別段違和感はありませんが」
「どういう意味だよ」
「あなたが一番わかってるんじゃないんですか。……それとも、それも演技、とか?さすがですね」
「………オマエさぁ」
「おっと、そろそろ次のシーンがはじまります」
そう言って七海は待機場所から出て行った。
五条は苦虫を嚙み潰したような表情をしたのち、乱暴に頭を掻いて撮影場所へと向かった。